■ ページ6
*
大量に並ぶゼリーの中で、知念が今食べられそうな軽めのものを手に取る。
吐いたばっかりで食べるの嫌がりそうだなあ…。
ただでさえ体調が悪い時は一気に食欲が落ちるのに。
涼｢ちねーん、裕翔がゼリー買ってきてくれたよ｣
侑｢………｣
泣いたせいで真っ赤になった目。
ふるふると首を横に振って、その動きで頭が痛くなったのか顔を顰めた。
……ダメか。
でもこのまま薬を飲まずにいる訳にもいかない。
さっきまで泣いていたから、ここから頭痛が酷くなるのは目に見えている。
吐く程度で治まるならいいけど……
それこそ意識を失うなんてことがあったらと思うと気が気じゃない。
裕｢知念、仕事したいんだよね？｣
侑｢……ん、｣
裕｢お薬飲まないと、知念辛いでしょ。
そうなると俺たちも仕事していいよって言えないなあ｣
侑｢やだ、｣
裕｢じゃあゼリー食べてお薬飲もう？｣
諭すように優しく声を掛ける裕翔。
知念も仕事をしたい気持ちは変わらないのか、渋々というように頷いた。
裕｢食べられるだけでいいからね。
ちょっと体起こしまーす｣
さっきのようにちょっとした衝撃で吐いたりしないよう、慎重に知念の体を起こす。
やっぱりそれだけでも辛いのかぐっと堪えるような表情をする知念を見てこっちまで辛くなる。
薬飲んで、ちょっとでも痛みが軽減されればいいけどなあ。
涼｢はい、あーん｣
侑｢……じぶんで食べられる…｣
涼｢無理しない。力入らないだろ｣
侑｢……いじわる｣
恥ずかしいのか、口をとがらす知念。
めちゃくちゃ可愛いからなその顔。
隣の裕翔も｢可愛い！｣って言ってるし。
涼｢ほら、あーん｣
侑｢……ぁ…｣
涼｢美味い？｣
侑｢……ん、｣
涼｢だってよ。裕翔｣
裕｢よかったー、まだまだあるからね｣
侑｢……そんなに食べられないよ｣
ふふっと、ちょっとだけ笑ったのを見てホッとした。
さっきあれだけ自分を責めて泣いていたから
しばらくそれを引きずってしまったらどうしようかと思っていた。
……それでも、目に涙をためて力なく笑っているから心配に変わりはないけど。
*
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 154人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：tom | 作成日時：2022年4月3日 17時
