後片付けの段 前編 ページ9
「…………気絶したか?」
慎の腕の中、ぐったりと動かなくなった男を見ながら桐人が聞いた
「たぶんね。もう動かないし」
その言葉を聞いて乱太郎がやっと男の口に当てていたタオルを外す
「ふぅ…………案外あっけなかったな」
辰巳が小さく呟く。その声に、4人は顔を見合わせてニヤリと笑いあった
「それじゃ、この人運ぼっか」
乱太郎が男のナイフに手早くタオルを巻きつけ、ポーチに押し込みながら言う。三人とも頷いた
会場からドッと歓声が沸き、拍手が起こる。今度は治の腹でも切って見せてまた戻したりでもしたのだろうか
まぁ、何にせよ会場の目がこちらに向いていないのはありがたい。さっさと運んでしまおう
「こちら猪名寺。被疑者を確保。刃渡り30センチ程度のナイフを所持していた。今からそっちに向かう。どうぞ」
『黒木了解。その男は銃刀法違反でとりあえず警察に引き渡す。あとは先生方が上手く取り計らってくださるようだ。乱太郎、お疲れ。みんな、お疲れ』
翔真からのコールは最後だけ全員の無線に届いていた。辰巳の顔にふっと笑みが浮かぶ
「終わったな……」
その言葉に、護衛班は誰ともなしに頷いた
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『乱太郎、お疲れ。みんな、お疲れ』
パソコンから流れる嫌味ったらしいほど冷静な声に、思わず苦笑いしてしまった
あんな風にしている奴は昔から嫌いだ。あの手の奴は自分が一番賢いと思い込んでる。
無論、そんなことは無いのだが。護衛があの大川学園のスパイ達と分かって警戒していたのだが、蓋を開けてみたらただのバカガキ共だった、というわけだ。こんな簡単な作戦に引っかかるとは
だいたい、ホテルの回線にハッキングする時点でハッカーの一番バカな奴にも劣る。盗聴される可能性を考えないとは。
浅はかにも程があるな。調子に乗ってるからそうなるのさ
「………ガキ共、待ってろよ」
今、思い知らせてやる
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「まぁ、君達。座りなさい」
はぁ、そんじゃ座るか。やっぱ落ち着かねーけど。
でもま、こんぐらいでちょうど良いのかもしれない。これからまだ、後片付けが残ってんだからな
「どうしたね、君達?やけに怖い顔して」
「いえ、藤宮会長。ちょっとした後片付けがあるだけです」
樹……声は優しいけど顔はヤバいぜ、あたしが言えた事じゃねーけど
「少し取りこぼしたのがあったんです。大丈夫。すぐ片付きますよ」
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葵 - 団蔵の名前が違う! (2020年3月15日 10時) (レス) id: 6a4116cfed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:塩大福 | 作成日時:2014年1月3日 20時