135【そして彼は真実を知る】 ページ6
太宰と連絡を取り、中島は情報提供者と会うので別行動になった。
一方谷崎は情報の裏取りや院長の動向を知るために例の孤児院に電話を掛けている最中だった。
「__ええ、はい__」
「……」
案外順調に進んでいる電話を横目に、例の記事を眺める。
この前の三組織戦争、もとい組合戦のほとんどは政府組織が隠蔽しているらしい。
しかしあんな規模の出来事を隠しきれる訳も無く。この記事が良い例だ。
(……自分で追い出したのに、何で会おうとしたんだろ)
中島が出世したと思ったのだろうか?でも見た感じこの記事にそれっぽいこと書かれてないし。
それに会うにしても殺すにしても、何であんな場所に居たんだろうか。
「__っ」
谷崎が息を呑む。
首を傾げていると、まもなくして電話は終わった。
「谷崎、どうだった?」
「……」
黙り込んだ谷崎は顔色が悪い。
しばらく視線を彷徨わせて、何回も口を開閉させた後にようやく話した。
「……その、院長さんは敦君に会いに来たんだ。
…………激励の為に」
「………………は?」
目を見開く。
低い、震えた自分の声がどこか遠くに聞こえる。
目の前が真っ暗になったと思った。
心臓が早鐘を打って、手も震えている。
じゃあ、何なんだ。その院長は、最初から、中島のために?
「……Aちゃん?」
谷崎が心配の色を浮かべこちらの様子を伺っていた。
声が震えそうになるのを堪えて、何とか口を開く。
「……いや、ちょっとびっくりして…………
ごめん、ちょっと抜ける。体調戻ってないみたい」
「…………分かった。一人で帰れる?誰か呼ぼうか」
「平気、だから」
そう言うと、ふらふらとその場を離れる。
ただ、その場を離れたくて仕方がなかった。
〇
「敦君、院長が何を購おうとしていたか判ったかい?」
「……はい。予約がありました」
少し先のベンチで中島と太宰が話している。
念のための幻覚も二人にかけているのでバレる心配は無い。
「先生は僕に会う前に花束を……購おうと……」
「その代金の為に院長は昔入手した銃を売ろうとした。そして取引現場に向かう途中、事故に遭い亡くなった」
それでも許せないと言う中島に許す必要は無いと返す太宰。
院長自身が地獄に居たからこそ、理不尽への怒りが人を生存させると彼が信じたとも。
「そして君に同じ地獄を施した……もしそれが無ければ、そして自分が虎だと知っていたら、あの川縁で君は生存を諦めていたと私は思うよ」
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アラモード(プロフ) - 更新楽しみにしてます! (3月15日 19時) (レス) @page13 id: f9e6be770b (このIDを非表示/違反報告)
りんご飴(プロフ) - うたねのどあさん» わ〜いつもありがとうございます〜!!私も書いていて本当に楽しいです!わりとこの後手探りなので頑張りますね……! (1月18日 23時) (レス) @page10 id: 2b38128ef8 (このIDを非表示/違反報告)
うたねのどあ(プロフ) - 夢主ちゃんがメイン…!!お話の物語、展開とか本当に好きすぎます!!この先本当に楽しみです!!更新楽しみにお待ちしております!! (1月17日 23時) (レス) @page10 id: d12e45b1fd (このIDを非表示/違反報告)
りんご飴(プロフ) - 星月ぱろあ@ろあ民🐈‍⬛さん» ありがとうございます!そこそこの長さなのに凄いです……!これからも頑張ります! (1月2日 0時) (レス) id: 2b38128ef8 (このIDを非表示/違反報告)
星月ぱろあ@ろあ民🐈⬛ - 一気見しました。更新頑張ってください。 (12月31日 21時) (レス) @page5 id: f169115c31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りんご飴 | 作成日時:2023年12月24日 21時