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133【その問いは虚しく響く】 ページ4

「敦君、こっちこっち!」

背後で谷崎が中島を呼ぶ声が聞こえる。
目の前には上半身を隠すようにシートがかけられた死体がコンクリートに横たわっている。
谷崎と向かった依頼先で江戸川にヘルプがかかったはず、なんだけど……

「乱歩さんの代理で……殺人事件ですか?」
「代理?乱歩さんは?」
「それが……」

中島いわく江戸川は焼き菓子を堪能している最中だったそうで。

「あぁ……なら仕方ないね」
「ですよね」

(良いんだ……)

江戸川の気持ちは大いに分かる。分かるけどそうやって納得して良いものなんだ。
ごほん、と軽く咳ばらいをして鑑識?の人から貰った情報を読み上げる。

「被害者は四十代の男。今朝午前四時、トラックに撥ねられて即死。顔が潰れて身元不明……だってさ」
「交通事故?」

中島の疑問にさっきの情報収集で聞いた話を脳内に浮かべた。

「殺人かも。運転手いわくこの男、弾かれたみたいに道に飛び出したんだって」
「それにこれ」

谷崎が死体の腰あたりを指差す。
そこには拳銃が血に濡れた状態でポケットの中から顔を出していた。

「製造番号の無い密造銃……黒社会で二十年程前流行した型だよ。
加えて近所の人の話では誰か人を探してたッて」

この人は殺し屋か何かで、殺そうとした相手に逆に殺されたのだろうか。
三人で頭をひねるも、推測の域を出ない。
中島がふと男の握っていた紙に目を向けた。
雑誌記事だか新聞記事だかのそれは大部分が千切れてしまっている。

「肝心の写真部分が千切れてるね」
「何処かに落ちてるんでしょうか」

二人と共に軽く辺りを見回す。
すると突然、谷崎が何やらポーズを決めて叫んだ。

「超推理!!」

居心地の悪い沈黙。

「……駄目だ。何も判ンない」

(じゃあ何でやったの?)

ツッコみたかったが、いたたまれなさがそれを上回ったので止めておいた。

「推理と云えば、出掛ける前に乱歩さんが……」

江戸川が『困ったら花屋を捜せ』と助言したそう。
きっと江戸川なら全部分かってんだろうな。

「二人共、指紋から被害者の身元が割れたよ」

そう言ってこちらに一枚の紙を見せてきた。
そこに載っていたのは簡単な経歴と、一人の男の顔写真……

「う、うわあああああああっ!!!」
「「!?」」

叫び声を上げながら怯えたように後ずさる中島。
顔を真っ青にして、何かにすがる様に声を張り上げた。

「何故、何故あなたが此処に!?
何故です、院長先生!」

134【死人に口無し】→←132【魔法少女とは】



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アラモード(プロフ) - 更新楽しみにしてます! (3月15日 19時) (レス) @page13 id: f9e6be770b (このIDを非表示/違反報告)
りんご飴(プロフ) - うたねのどあさん» わ〜いつもありがとうございます〜!!私も書いていて本当に楽しいです!わりとこの後手探りなので頑張りますね……! (1月18日 23時) (レス) @page10 id: 2b38128ef8 (このIDを非表示/違反報告)
うたねのどあ(プロフ) - 夢主ちゃんがメイン…!!お話の物語、展開とか本当に好きすぎます!!この先本当に楽しみです!!更新楽しみにお待ちしております!! (1月17日 23時) (レス) @page10 id: d12e45b1fd (このIDを非表示/違反報告)
りんご飴(プロフ) - 星月ぱろあ@ろあ民🐈‍⬛さん» ありがとうございます!そこそこの長さなのに凄いです……!これからも頑張ります! (1月2日 0時) (レス) id: 2b38128ef8 (このIDを非表示/違反報告)
星月ぱろあ@ろあ民🐈‍⬛ - 一気見しました。更新頑張ってください。 (12月31日 21時) (レス) @page5 id: f169115c31 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:りんご飴 | 作成日時:2023年12月24日 21時

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