【はじめてのー!おーつかいッ】 ページ16
×××
屑籠の中で、ぐしゃぐしゃに丸められた一通の手紙____。
謹んでお詫び申し上げます。
____私は未だに、其の返事を書けずにいるのです。
***
組合の団長・フィッツジェラルドと桧室が、中島達と組合の刺客が対峙した日から数日が経過した。
あの日から特別に大きな事件は起きていなく、穏やかで平和な日常が続いている。
武装探偵社に所属している調査員、事務員は今日も忙しなく働いていた。鳴り響く電話に、書類のチェックを求める声と社内は賑やか。桧室も、自分のデスクの上に置かれた書類の束を黙々と整理している。
「おやおやァ? 桧室ちゃん、何だか元気がないようだねぇ」
「......ッ!? 何だ、太宰さんですか」
突然背後から声を掛けられ、桧室の軀はビクッと大きく跳ねた。
慌てて振り向くのだが、声を掛けて来た人物が誰だか判ると大きな溜息を吐く。
其処には物騒なタイトルの本を手に、相変わらずの胡散臭い笑顔を浮かべている太宰の姿があった。然し、彼は彼女の台詞に不服そうな表情を浮かべると、「『何だ』とは酷くない?」と云う。
「嗚呼、それはそれは 済みません?」
「わぁ 全く感情が込められてない謝罪だね」
桧室は眉を八の字に下げ、謝罪をする。
太宰の云う通り、彼女の口から出た謝罪の言葉には感情が込められていなかった。然も疑問形。
にっこり、点数をつけるならば百点満点を与えられるような素晴らしい笑顔を浮かべると、「気の所為では?」桧室は誤魔化した。
「それで 太宰さん、私に何か御用ですか?」
「んー 特に用はないのだけど......桧室ちゃん、随分と眉間に皺が寄ってるから」
えい、と云う声と共に太宰の細く長い指が伸びてくると、桧室の眉間をぐりぐりし始める。
これは地味に痛い、痛い。
「......ッ、一寸 痛い 痛いです」
「考え事をしているみたいだけど、亦
彼の台詞に、桧室は僅かだが反応を見せた。
太宰はその反応を見逃さなく、薄笑みを崩さずに彼女の眉間をぐりぐりする指を離した。
「判ったみたいだね」
「勿論____ところで、太宰さん」
「何かな?」
桧室はキョロキョロと周りを見る。
「中島さんと鏡花ちゃんは、何方に?」
二人ともとっくに出勤してる筈なのだが、姿が見えなかった。太宰は鳶色の瞳を細めると、「御遣いに行ってるよ」そう答えた。
×××
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ミサぽん(プロフ) - 沙羅さん» コメント有難うございます!別作品と掛け持ち故、少々遅れてしまいますが頑張ります! (2020年1月7日 23時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
沙羅 - とでも面白いです!!更新待ってます、、、!! (2020年1月7日 23時) (レス) id: d676b6612b (このIDを非表示/違反報告)
ミサぽん(プロフ) - 雛さん» コメント有り難う御座います!とても嬉しいです^_^ (2019年12月14日 14時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
雛(プロフ) - 文才のかたまり、わたしにもください。小説とても読みやすいです。 (2019年12月14日 14時) (レス) id: a41e581cbd (このIDを非表示/違反報告)
ミサぽん(プロフ) - リリアさん» わわわ!コメント有り難う御座います!太宰夫婦シリーズ、読んでくださっていたんですねっ あの作品にも思い入れは沢山有りますから、余裕が出来ましたらまた更新を再開させようと思います!好きだったと言ってくれて、本当に嬉しいです! (2019年12月14日 0時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミサぽん | 作成日時:2019年11月18日 9時