9話 ページ10
「おかえりなさいませ。」
「おめでとうございます。ご無事でなによりです。」
最終選別が終わった。死んだのは、錆兎ただ一人だった。
我は意識が朦朧としている冨岡を背負い、支給品を受けとった。
そして、諸々のことが終わり解散となった。
あまり使いたくなかったが、やむを得ない。
我は宿命智通を使って、冨岡の過去を覗いた。
どうやら冨岡は、狭霧山で鱗滝という男のもと、錆兎と一緒に鍛錬を重ねていったらしい。
その鱗滝という男に、此奴を預ければいいだろう。
烏に案内を任せて狭霧山に向かった。
狭霧山につき、冨岡を背負ったまま、しばらく歩いたら一軒の家を見つけた。
戸を叩くと、天狗の面をつけた老爺が出てきた。
「義勇…！！」
我と一瞬目を合わせた後、老爺は後ろにいる冨岡に声をかけた。
『生きてる。治療はしておいた。
錆兎は、逝去した。勇敢な最期であった。』
「そうか_____ありがとう。」
老爺は俯いてそう言った。声が震えていた。
それから暫く沈黙が続いた。
「お前さんが良かったらの話だが、日輪刀ができるまで時間がかかるだろう。
ここに泊まっていかないか？お礼がしたいんだ。」
鱗滝は嗄れ声でそう言った。
少し悩んだが、10日程度だったらいいだろう。
それに我も此奴に優しさを、無下にすることはできない。
『ありがとう。そうさせてもらおう。だが、無償で泊めてもらうのは気が引ける。
困ったことがあれば遠慮なく頼ってくれ。』
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作者名：kogyu788 | 作成日時：2023年5月3日 16時
