大人になった彼達は1 (ページ41)

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人の私物に対して失礼なことを考えているとロビーの窓際にあるソファーに促され、横に並んで座った。
本格的に夏に近づいたこの季節では、まだこの時間、外はうっすらとオレンジ色の箇所も見え隠れしている。

「阿部ちゃんさ、さっきからなんでごめんばっかり言っちゃうんだろ」
「・・・さぁ？口癖じゃない？」

何が言いたいんだろう。
ちょっと探るような返答になってしまう。

「ふーん。・・・あのね、ゴメンて言葉には3種類あるんだって。」
「・・・へぇ？」
「一つはね、目の前の人に単純に謝りたい時。俺のお誘い断ったのと、返信くれなかったのにはシンプルに謝ってくれてるんだよね」
「そーだよ、ほんとゴメンて・・・」

あはは、もういいんだよ！なんて隣で足をバタつかせる。

「二つめは、頭が悪くてほかの言葉を知らないって人も良く使うって」
「俺の口癖はじゃあ、頭悪いってこと？」
「ぶっぶー！阿部ちゃんは賢いからね！そんな事言ってません～」
「なんだ、急にディスられたのかと思った」
「違うよ～。そういや新しくウチに入ってきたコ、めっちゃゴメンっていうの。まずゴメンからはいるヤツ」

あれは頭悪いタイプのゴメンだよ～、なんて笑顔でかなり辛辣なことを言ってる。
佐久間は敵に回したくないタイプだな。
なんて心にとどめておく。

「で、三つ目は自分が許されたいって思ってるとき」

佐久間は足をパタパタさせながらどこか遠くを見ている。
どきっとして、急に居心地が悪くなった。

「心が苦しくなっちゃって、自分を責めて責めて自分で自分を許せなくなっちゃったとき、だれかに正当化してほしくて言っちゃうんだよ」
「・・・それが俺だっていうの」
「気分悪くさせたよね。・・・でも、阿部ちゃんのこと責めてるとか、否定してるんじゃないよ。阿部ちゃんは正しい。間違ってなんてないよ」
「・・・。」

「あの状況をどうにか出来しようなんて、ヒーローかよってハナシだよ。今回は俺がたまたまヒーローとお知り合いだったってだけ。」

みんな自分がどうにか出来るって自身がある人なんていない。
偶然が重なって運よく上手くいっただけなんだよ。

そう、佐久間は言う。

「けどさーあ、阿部ちゃん、」

“自分の心に嘘ついてるんじゃなぁい？”

ぱっちりとした小動物みたいな瞳とパチッと目が合った。

「阿部ちゃん、スゲー苦しそうな顔してる」