第六十七訓 ページ41
「惚れた女にゃ、幸せになってほしいだけだ」
その言葉に、やっぱり、とAは思った。土方は今も、ミツバのことを思っているのだろう。
ミツバがどうしようもなく、羨ましいと思ってしまった。不器用ながらも真っすぐに愛を向けられていることが。
「普通の男と普通にガキ産んで、普通に生きてほしいだけだ」
刀を持つ自分に、その普通はあげれないから。その土方の心はAにも、ひどく理解できた。
「なるほど、お侍様の考えることは理解できかねますな…
撃てェェ!!」
「!!」
蔵場の合図と共に2人に銃弾が浴びせられると構えた瞬間、別方向から爆音が鳴り響いた。
「いけェェ!!」
そこから突入してきたのは、近藤率いる真選組だった。
予想外の事態にその場は乱闘と化した。
その最中、逃げようとする蔵場が、そして敵に銃撃を食らっている土方の姿がAの目に映った。
「土方ァァァ!!!」
Aが土方のもとへ向かうのは、一歩遅かった。
土方の隣にあったタンクに銃撃が当たり爆発した。
爆風と共に舞い上がったのは土方のジャケットだった。
煙をかき分けながら先ほどまで土方がいたであろう場所についたが、そこには誰もいなかった。
曇る視界のなか、車の音そしてバイクの音が聞こえた。
煙が晴れ、その視界に映ったのは、蔵場が乗っているであろう車のタイヤに刀、木刀を入れスピードを落とさせている土方と銀時の姿。
そして車の目の前に立ち、近づいてきたそれを
ドォン!!
両断した、総悟の姿だった。
―――――
その場を鎮圧した後、真選組はミツバの入院する病院へと戻った。
もう長くはない、最後に面会が許されたのは総悟のみだった。
話す姉弟をガラス越しに見ながら、Aはもうずっと会っていない、どこにいるかも互いにわからない姉の事を思った。そして、ミツバと話したかったというのは、願望に終わってしまった。
燻る感情を抑えようと、風の当たる屋上へ向かった。
そこには土方、そして物陰に背を預け座る銀時がいた。なるべく気付かれないよう、静かに銀時の隣へ座る。
背後からは、土方が涙を流す音が聞こえた。
それを聞き、何故だかわからない。
Aの頬にも、1筋の涙が流れた。
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黄羅(プロフ) - ななさん» コメントありがとうございます。そう言って頂けてうれしいです!そしてご指摘もありがとうございます。区切りの良い所まで行ったら設定を大幅に変えようか検討中です。その際にはお知らせ致しますので、これからも見て頂けたら幸いです! (2021年2月5日 5時) (レス) id: 3f33cf0222 (このIDを非表示/違反報告)
なな - 楽しんでいつも見てます!高杉との絡みがあって嬉しいです! ただ月詠口調がやりすぎじゃないかなって気になりました。 (2021年2月5日 4時) (レス) id: becceb0046 (このIDを非表示/違反報告)
ユウカ - 更新楽しみに待ってます! (2015年3月12日 14時) (レス) id: a76acd2a98 (このIDを非表示/違反報告)
桃果銀魂LOVE(プロフ) - 更新頑張ってください!応援してます♪ (2015年1月24日 8時) (レス) id: 3c29a828b5 (このIDを非表示/違反報告)
ミシェル(プロフ) - 続きィィイイ〜!!見たい〜!!一国傾城篇とか!! (2015年1月2日 1時) (携帯から) (レス) id: eac2cfa6e5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黄羅 | 作成日時:2013年7月30日 20時