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―――気づけば、過去の私が立っていた場所に、今の自分が立っていた。足元には、あの時落としたクラスの出席簿。
当時の私は、あんなクソガキ共に人生をめちゃくちゃにされて悔しくなかったんだろうか。なんにも知らない親達に理不尽に責め立てられて、見て見ぬフリをしている教師達に都合の悪いことは全部押し付けられて、そんな過酷な環境下で、私は、なんとも思わなかったのだろうか。
現実では拾えなかった出席簿を拾い上げながら、自嘲する。思わなかった訳がない。ただ、それを表に出してはいけないと本能が止めていた。表に出せば今以上に状況が悪化する。悪化するくらいなら、今のままの方が何倍も―――。
「―――ばっかじゃねーの」
拾い上げた出席簿を、バンッと思いきり教卓に叩きつける。その瞬間、あんなにも騒がしかったクラスが一瞬にして静まり返った。もし、あの時の私に、ここまでする勇気があったなら。きっと良い子達だ、なんて幻想を抱いていなければ。私はまだ、ここに立てていた筈だ。
ばっかじゃねぇの。周りでガタガタ騒ぎ立てるだけの親も、言うだけ言って手を差し伸べさえしない教師も、大人をなめ腐って好き勝手に暴れまわるガキ共も……この期に及んで、まだ夢を見ていた自分も。どいつもこいつも、馬鹿ばっか。
「大人なめてんじゃねぇぞ、クソガキ」
―――自分勝手な子どもも、こんなにも弱い自分も……全部、大っ嫌いだ。
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嫌な夢を見た。あんなにも忘れて起きたいと願ったのに、嫌というほど鮮明に思い出される夢の出来事には、思わず神様はなんて無情なんだと思わずにいられない。
夢でも現実でも、いつだって私はタラレバばかり。自分から長年の夢だった職業を捨ててここに居るに、こんな悪夢を見ては、自分が変われたかもしれない世界線を夢想してしまう。今もまだ教師でいれたかもしれない世界線を、妄想してしまう。
あぁ、変な夢を見たせいだろうか。頭が酷くガンガンと痛む。部屋の明かりすらも眩しくて腕で目元を覆えば、額になにかが貼り付けられていることに気づいた。これは……冷えピタ?
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