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第四十二話 ページ46

太宰さん視点


太宰さん「......こうして二人で座っていると、初めて会った晩のことを思い出さないかい?」


「はい...そうですね」


太宰さん「あの時もこうして.......」


そう言って彼女の口元に箸を運ぶ。


「え!?え!えぇ!」


動揺する彼女の目を見つめ


太宰さん「ほーらAちゃんあ〜んして?」


 と言えば少し照れながらも彼女は蟹缶を口に入れた。


「..........」


太宰さん「どうだい?」


「やっぱり、美味しい...です。ふふふ、あの時と一緒、ですね」


悪夢の恐怖でこわばっていた彼女の表情が少し和らいだ。


太宰さん「さて...と、お腹も膨れたし私そろそろ眠いな」


「あ、お布団敷きましょうか...」


 数日前から彼女は毎晩うちへ来るようになり、いつの間にか私の自室には布団が一式増えていた。


 このことを国木田くんが知ったらどんな顔をするだろうか...。


 ゆでだこのように顔を真っ赤にした国木田くんを想像してみてクスッと笑う。


「...?随分楽しそうですね」


自分のことを笑ったのだと勘違いしたのか、Aちゃんは不機嫌そうにこちらを見た。


太宰さん「あぁ、少し面白いことを考えてしまってね」


「ふ〜んそーですか」


その顔は...私がやましいことでも考えていたと思っているのだろうか。


 全く......今まで何度も君を家に止めたにもかかわらず一度だって手を出していないというのに。


 もちろん、こちらにその気がなかったわけじゃない。


 彼女の入浴中、眠そうに目を伏せる横顔を見る時、寝顔を見る時、


何度もいっそ開き直って彼女を押し倒してしまおうとも思った。


 今まで何人もの女性にそうしてきたように。







 だけど......いざそうしようと思うと、できない...。


 拒絶されてしまうのが、嫌われてしまうのが、行いを否定されてしまうのが......怖い。




 嫌われなくない...か、なんて自分勝手で傲慢な願いだろう。


 もう2度と感じることのないと思っていた気持ち.................。



















 どうやら私は彼女を一人の女性として”好き”になってしまってらしい。

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水無月麗(プロフ) - MANA☆さん» ありがとうございます😭 頑張ります! (2月8日 20時) (レス) id: 2daa15024e (このIDを非表示/違反報告)
MANA☆(プロフ) - わ、和歌月ちゃんが可愛いです…応援しています!投稿頑張ってください! (2月8日 17時) (レス) id: 320ec2c20a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:水無月 麗 | 作成日時:2024年1月30日 16時

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