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佐野「本当はあの時、俺も行ったんだ。」
『!!』
佐野「Aに会いに行った。」
ぽつりぽつりと話す佐野の声はどこか震えていて、嘘じゃないことが伝わってくる。
佐野「…でも会えなかった。」
『…なんで、?』
佐野「合わせる顔がなかった。…情けなくて、ごめんな。」
佐野の抱きしめる力が強くなる。
…私も、佐野の背中にゆっくりと手を回した。
『…やだ、許さない。』
佐野「…ごめん。」
『じゃあ、なんでこないだは声かけたの。』
佐野「…なんでだろうな。」
『…。』
佐野「Aのメアド見つけて、気付いたらメール送ってた。」
『…』
佐野「来るわけないって思いながら、Aならってどっかで期待してて、新幹線乗り場の改札んとこで1日中待ってた。」
『!!そうだったの、?』
佐野「うん。終電まで待つって決めてたから、見つけた時は考えるより先に体が動いてた。」
『…。』
佐野「……三ツ谷から電話来るなんて、予想外だったけど。」
少し間を空けて、低い声を出す佐野。
『…え、?』
佐野「…ごめん、なんでもない。」
佐野はそのまま私から離れて、私の頭を一撫ですると玄関に向かってしまった。
『っ、佐野、!』
佐野「…。」
『佐野、「やだ。」!?』
佐野「…Aとこれ以上一緒にいると、俺、ダメになる。」
『!!!』
佐野「…俺は、お前とはもう、同じとこには居れないんだよ。」
…お願い、お願いだから、そんな、悲しそうな声で話さないで。
佐野「……それなのに俺は、きっとまた会いに来ちまう。」
『!!』
佐野「……」
『さのッ…んっ、っ、、』
振り返った佐野は、私に話す暇を与える間もなく唇を重ねた。
触れるだけじゃない、長くて、深い。
息も、絶えてしまいそうな。
佐野「…お前を守るのは、これから先もずっと俺だけでいい。」
『っ、、』
佐野「またな、A。」
昔から変わらない、光の入ってない目で微笑んで、佐野はそこから消えてしまった。
『…まも、る、?』
唇にまだ残っている。
部屋にも、触れられた場所にも。
…思い出にも。
佐野はいつも、自分を忘れられないようにしてから居なくなる。
『っ…』
*
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妄想族同盟No.1(プロフ) - じゅりさん» この作品を読んでくださって、コメントをくださってありがとうございます、、!!すごく嬉しいです(泣)(泣)読者様からの温かい言葉で私が泣いてしまっています、、。更新楽しみに待っていてください!! (2021年7月28日 21時) (レス) id: ef88a247fc (このIDを非表示/違反報告)
じゅり(プロフ) - 泣くつもりは全くなかったんですが、読んでいくうちに涙が止まらなくなりました。。。いい作品をありがとうございます!更新頑張ってください!応援してます!! (2021年7月28日 12時) (レス) id: 21e5597aaf (このIDを非表示/違反報告)
妄想族同盟No.1(プロフ) - なのなのさん» ありがとうございます(泣)(泣)(泣)そんなことを言っていただけるなんて思っていなかったです、、とっても嬉しいです!読んでくださって本当にありがとうございます!!更新楽しみに待っていてください!!! (2021年7月28日 5時) (レス) id: ef88a247fc (このIDを非表示/違反報告)
なのなの - 本当にこの作品は大好きで、私のお気に入りです。 作ってくれてありがとうございます! これからも更新頑張ってください! 応援してます! (2021年7月28日 2時) (レス) id: 62e316d30c (このIDを非表示/違反報告)
なのなの - 最近読ませて頂いてます! このお話凄く楽しみで、ワクワクしながら読んでます!深夜ですが作品の方を見たら更新になっていて本当に嬉しいです 更新が待ちきれない程すごく好きで、しかも一度にたくさんの話を書いてくれるので、たくさん読めて本当に嬉しいです (2021年7月28日 2時) (レス) id: 62e316d30c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:妄想族同盟No.1 | 作成日時:2021年7月21日 13時