私の胸の鳴る理由(1) (ページ12)

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Aside

有『重役出勤ごくろうさん』

「あ、あはは･･･」

そのまま行こうとすると『おい』と手首を掴まれ、呼び止められる

「え？」

有『髪に葉っぱ、絡みまくってるんだけど』

「え？･･･え、！近道して中庭突っ切ってきたからかな･･･うそ、恥ずかしい...」

有『どこまでもアホだな･･･笑』

焦って、髪の毛を手櫛でとかして葉っぱを取ろうとしていると、隼人くんが近づいてきた

有『そこじゃない。動くな、やるから』

「え･･･」

一枚ずつ、丁寧に取ってくれる

どうしてそんなに優しくしてくれるの･･･

いけると思い込んで玉砕したあの時みたいに、私だけ特別ってまた勘違いしちゃうよ...

「･･･もう、いいよ」

普段なるはずがない距離感

隼人くんからコロンの香りがする

オリキャンの、夜を思い出して心拍数がありえない早さになっている

有『まだある』

隼人くんは端的にそう言った

強引なのに弱いんだってば･･･

「･･･っ、いいって、もう大丈夫。向こうで鏡見てやってくる。ありがとう」

作り笑顔で言い、逃げるようにその場を離れる

み『あ！A。ねえ髪の毛に葉っぱ絡まってるよ笑』

弥『ほんとだやばい笑』

み『取ってあげる』

「ありがと〜」

私の背中を、隼人くんがずっと目で追っていてことは知らない

No side

そしてそんなふたりを、数人の女子と一緒にいる長谷部が見ていた

いつもヘラヘラ愛想よく笑っている長谷部が、いつになく真剣な顔つきをしていることには誰も気づいていない