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見てしまった ページ4

俺は見てしまった。





「…ぁぁぁ、動か…ないで…」





同じクラスの鈴原さんが木に登って何かをしている。





「おい工!…どうかしたのか?」
「いえ…あそこに…」
「…木登りしているんか…?」





だんだんと暑くなってくる5月、少し長めの休憩時間で外に涼みに来ていた俺は体育館近くの木に登っている鈴原さんを見つけた。

三つ編みになっている髪の毛は枝に引っかかり、ほとんど解けてしまっている。

スポドリを持ってきてくれた瀬見さんにクラスメイトの現状を見せる。





「…何やってんだあの子」
「…わかんないです。教室でもいつも1人ですし」





はらりと完全に三つ編みが解ける。

ぽとりとヘアゴムが地面に落ちた。








「…いいこ、だから、一緒に降りて……っ!?」






小さな子猫を抱え、ゆっくりと体を起こす。

癖のついた髪の毛から覗いた目が、俺らを捉えた瞬間大きく見開いた。

瞬間、この状況に目が離せなくなる。

体の自由が"奪われる"。






「っ…お騒がせしてすいません…」






すぐさま彼女は目を逸らし、スルスルと木から降りて逃げてしまう。






「…瀬見さん」
「…ああ、言いたいことはわかる」
「…目が離せませんでした」
「…ああ、でもなんか感覚がが違ったな」
「どうしたノ??そこで2人女子に呆けて!!」






給水していた先輩達がこちらにやってくる。

その途端、先程までの身体の硬直具合が止んだ。





「…なんでもねぇよ!!」
「なぁんだ!ついに青春!!アオハル!!かと思ったのに〜」
「そんなんじゃねぇ!!ただな…」
「はい…引っ張られました…」





木下に落ちた鈴原さんのヘアゴムを拾う。

これが彼女に対する、初めての不思議な感覚。

見られた→←…見ないで


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作者名:あんにん会長 | 作成日時:2019年8月19日 22時

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