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四十六通目 ページ46

Aの真剣な表情に、当然のことながら和菜は驚きの表情を見せた。しかし少しして、まるでこれからの話を分かっているかのように、彼女はにっこり優しい笑顔を浮かべ、丁寧にゆっくり答えた。

「うん、聞くよ」

 何となく、その声が震えたように聞こえて、Aは躊躇った。けれど、和菜は何も言わずに笑顔を保ったまま話を待っているので、彼女はその先を話し始めるしかなかった。

「実は、二か月くらい前から――」

 Aはペンギンから最初の手紙をもらった日から今までの事を全て話した。人生で初めて想いを告白されたこと、返事を待ってくれたこと、お互いを少しずつ知ったこと、体育祭のこと、励まされたこと、彼との関りが楽しかったこと。一つ一つを、たどたどしくなりながらも打ち明けた。そして勿論、会いたいと伝えたことも、今の自分の気持ちが揺れていることも話した。
 和菜はただ笑顔を保ち、黙って話を聞いていた。そしてAが話し終わった時、一言、やはり震える声で呟いた。

「ありがとう」

 Aにその意味は汲み取れなかったが、聞き返してはいけない気がして、今度は彼女が黙った。
 和菜は一度咳払いをして声色を整えた後、話を戻した。彼女は勿論ペンギンの正体を確信しているわけだが、健吾が正体かもしれないというAの予想を、断言することはしなかった。

「それより、いつ会うの?」
「まだ決まってなくて。それに、会ってくれるかも分かんないから」
「会えるよ、きっと」
「そうかな……でも会ったら、どうしよう、何て言おう」
「気持ちを素直に言ったらいいと思うよ」

 一番の友人の助言に対し、Aは胸を詰めた。彼女はまだ完全に自身の心を認められたわけではなかった。

「でも」
「総士くんのこと、引っかかってるの?」
「うん」

 三年以上の想いを簡単には消せない。もう好きではないと言えば嘘になると思う。別の想いが遥かに濃く育っても、そう簡単には認められない。
 そうやって俯くAに、和菜はそっと言葉を添えた。

「もうきっとAの中に答えはあるよ。手紙の人と会って向き合えたら、自然に分かると思う。だから思い詰めなくても大丈夫」

 その言葉は、Aの胸のつかえを柔らかく溶かした。

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megumi(プロフ) - パトさん» 素敵なコメントありがとうございます!幸せな時間を差し上げることが出来たなんて、とても嬉しいです。これかの執筆活動の励みになりました。 (2021年3月7日 19時) (レス) id: 1a15500b7d (このIDを非表示/違反報告)
パト(プロフ) - 素敵な作品を作って下さりありがとうございます。文章が綺麗でほのぼのとした雰囲気も好きすぎて、一気読みしてしまいました。幸せな時間をありがとうございます。 (2021年3月7日 17時) (レス) id: 8ed95612e3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:megumi | 作成日時:2020年2月1日 23時

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