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四十四通目 ページ44

Aは、水橋の言うことに深く頷いた。同時に、それを感じ取れる彼女を、心の中でひたすら称賛した。ただ、和菜の前での健吾について注意を払ってこなかったので、彼については依然分からなかった。

「あたしが、和菜ちゃんみたいな友達欲しいって言ったのは、そういう意味なんだ。何にも考えずに一緒に居られて、自分を出し合える友達が欲しかったの」

 寂しそうに言う水橋の表情は、教室では見られないものだった。昇降口で彼女と会ってから、Aは水橋の素顔を垣間見てきたように感じる。
 それはそれとして、彼女の言葉にふとあることを思った。

「健吾くんは?」

「ちょっと違うんだよね。確かに健吾の前なら疲れはしないけど、一緒に居ようとは思えないもん。それは相手も同じだと思うけど」

 分かるようで分からないその感覚を、Aが懸命に理解しようとしていると、水橋が「あ、でも」と何か重要な真理を発見したような声を上げた。そしてAの目を覗き込んだ後、照れくさそうに伏し目がちな笑顔で、こう打ち明けた。

「Aさんとこうやって話すの初めてなのに、すごく楽だし、一緒に居たいって思う。何か、あたし、かなり喋れてるし。名前で呼んでもいい?」

 直球の好意に、友情であってもAは頬が熱くなる。そして声を詰まらせながら、自身の気持ちも伝えた。

「う、うん! あの、わ、私も、水橋さんと居ると、安心するし、楽しいよ。私も名前で呼んでもいいかな」

 素直に言葉にしてくれた水橋に対して、自分も声にしなければならないと思った。
 水橋はやや目を大きくした後、「ありがとう」と柔らかく目を細めた。


 二人は店を後にして、街中を歩き和やかに買い物を楽しんだ。最初街に出た時は重い空が広がっていたのに、今は雲も途切れて青空が覗いていた。
 帰りの駅で、水橋は一言切り出した。彼女の表情も、この空模様に似て、晴れやかな内面が姿を現していた。

「Aちゃんって、最近変わったよね」
「そうなのかな。和菜にも言われたんんだけど……」
「明るくなって話しかけやすくなったのと、何か、幸せそう」

 最後の"幸せそう"という文字が強くAの胸に焼き付いた。

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megumi(プロフ) - パトさん» 素敵なコメントありがとうございます!幸せな時間を差し上げることが出来たなんて、とても嬉しいです。これかの執筆活動の励みになりました。 (2021年3月7日 19時) (レス) id: 1a15500b7d (このIDを非表示/違反報告)
パト(プロフ) - 素敵な作品を作って下さりありがとうございます。文章が綺麗でほのぼのとした雰囲気も好きすぎて、一気読みしてしまいました。幸せな時間をありがとうございます。 (2021年3月7日 17時) (レス) id: 8ed95612e3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:megumi | 作成日時:2020年2月1日 23時

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