救いの眼差し ページ43
つい会話上手な奥さんに乗せられて、聞かれるがままに自分のことを色々と話していた。
その度に向けられる温かい眼差しに、恋しさを覚える。
いつまでも、その視線を向けられていたいと思った。
何故ならそこに母の面影を重ねていたからだ。
依存関係により、貰った愛情は異常なまでに深かった。
私はいつも優しく温かい目で見つめられていた。だがそれは小学生の頃までだった。
中学生になり、徐々に大人の感情が分かるようになると、母の眼差しは縋るようなものに変わった。母にとって私は、唯一の拠り所であり、救いの手であった。
いつからだろう、その視線が苦しくなったのは。苦しいのに、自身も依存していたため、それを無視しようなんてことは思わなかった。それよりも母が辛そうな顔を見る方が苦しかったので、私は彼女を必死で笑顔にしようとしたし、彼女の望むように生きた。
だけど、心の何処かでいつかの母の温かい眼差しを待っていた。あの時から、もう異常な愛情だったのかもしれないが、亡くなるまでで一番母親らしい、安心を与えてくれる愛情だったのは確かだ。
それが今やっと目の前に現れたのだ。その目は不倫相手の奥さんという立場の人のものだったが、私の求めていたものに違いなかった。
堪えきれない涙が押し出されて、頬に流れては落ちる。あんなに美味しかった紅茶の味が分からなくなるほど、私は泣き続けた。
「ずっと……辛かったでしょう」
暫く経った頃、今まで何も言わずに見守ってくれていた奥さんは、癒すような声で私を包み込んだ。
「もう、頑張らなくていいですよ。今まで、一人で背負い込んで、苦しかったでしょう」
家庭の事情に関しては何一つ話していなのに、どうしてこの人は私の望む言葉を贈ってくれるんだろう。全て理解してくれているように思えて、傷が滑らかに癒されてゆく。
「もしかして、私の事情をご存じなのでしょうか？」
息を整えた後、引っかかっていたことを恐る恐る口に出す。
「いいえ。ごめんなさい」
申し訳なさそうな返事に、落胆しかけた。
「それでも、あなたの苦しみは分かります」
「どうして……」
だが、次に続く言葉に救われた。
「あなたを理解したいと思うから。私はAさんが好きだから」
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megumi(プロフ) - いなすらさん» ありがとうございます！ご期待に沿えるよう、頑張って執筆します(^^) (2019年5月22日 18時) (
レス) id: 04e98a2c19 (このIDを非表示/違反報告)
いなすら(プロフ) - めぐみさん» 誤字でしたか(笑)大丈夫ですよ！続き楽しみにしております((｡´･ω･)｡´_ _))ﾍﾟｺﾘﾝ (2019年5月22日 17時) (レス) id: 4bc43cc691 (このIDを非表示/違反報告)
めぐみ(プロフ) - いなすらさん» いなすらさん、ご指摘ありがとうございます！誤字です、申し訳ありません。すぐに訂正いたしますm(__)m (2019年5月22日 17時) (レス) id: a2b7118433 (このIDを非表示/違反報告)
いなすら(プロフ) - 作品名、幸せだからいになっていますが、誤字でしょうか？意図的なものではないと思いますが、そうだったらすみませんm(*_ _)m (2019年5月22日 15時) (レス) id: 4bc43cc691 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：megumi | 作成日時：2019年5月21日 5時
