出会いの意味 ページ49
-Aside-
「私は、あなたのお母さんにもう会えないと知って、泣き続けた。あんなに泣いたのは初めてでした」
母の為の涙を流したのが私一人ではなかった。それだけのこと、他人にはそんな風に片付けられてしまうかもしれないけれど、私にとっては胸がいっぱいになる程のことであった。
「あの」
「はい」
「母の為に泣いて下さって……ありがとうございました」
私の他に、誰一人として母を想ってくれている人はいないのか、と嘆いていた。
あんなに我慢して、家族に尽くして生きたのに、ただ愛されることを望みながら光を浴びることなく消えてしまったなんて、あまりにも虚しいじゃないかと、行く当てのない恨みを抱えていた。
でも私の知らない場所で母は、亡くなる前のたった数日だけだったけれど、それでも確かに愛された。母が消えたことで涙を流す人が居た。
奥さんが居てくれ良かった。こんな形ではあるけれど、今こうして出会えて良かった。
朝倉さんと出会ったこと、それは間違いでしかなかったのだと胸を痛めていた。越えた一線によって背負った、重すぎる罪悪感に潰れそうで、けれど捨てられないのは彼を愛していたからだった。
日々積もる自己嫌悪から抜け出したくても、この愛から抜け出せなかった。
でも、この出会いには別の意味があった。心が満たされてゆく。
「お礼を言うのは、私の方です。私を救ったのはあなたのお母さんなんですから」
そう微笑むと、目を伏せながら先を話した。
「自分の夫への愛も見えなくなり、生きている意味が分からなくなっていた私は、あの方の言葉で彼への愛がまた見えるようになったんです」
奥さんは私に視線を戻し、何かを差し出した。
「これを受け取って下さい」
繊細な手に乗せられていたのは、あのストラップだった。
「いえ、母はあなたに託したのですから、奥さんが持っておくべきです。大切にしてあげて下さい」
流れ落ちる涙を拭うことなく、彼女にそれを託す。
気付けば彼女の瞳も濡れていた。
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megumi(プロフ) - いなすらさん» ありがとうございます！ご期待に沿えるよう、頑張って執筆します(^^) (2019年5月22日 18時) (
レス) id: 04e98a2c19 (このIDを非表示/違反報告)
いなすら(プロフ) - めぐみさん» 誤字でしたか(笑)大丈夫ですよ！続き楽しみにしております((｡´･ω･)｡´_ _))ﾍﾟｺﾘﾝ (2019年5月22日 17時) (レス) id: 4bc43cc691 (このIDを非表示/違反報告)
めぐみ(プロフ) - いなすらさん» いなすらさん、ご指摘ありがとうございます！誤字です、申し訳ありません。すぐに訂正いたしますm(__)m (2019年5月22日 17時) (レス) id: a2b7118433 (このIDを非表示/違反報告)
いなすら(プロフ) - 作品名、幸せだからいになっていますが、誤字でしょうか？意図的なものではないと思いますが、そうだったらすみませんm(*_ _)m (2019年5月22日 15時) (レス) id: 4bc43cc691 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：megumi | 作成日時：2019年5月21日 5時
