桃色 3輪目 親友side ページ4
-あずさside-
何度も今日こそ話をしようと心に決めるけれど、なかなか一歩が踏み出せない。
「精市……」
「ん？ 何だい？」
花のような美しく儚げな笑顔を見ると、その先を言えなくなる。
だけど、いつまでも立ち止まっていたらだめだ。
「話があるの」
どちらの道に進むにしても、この一歩、足を出さなければ分岐点には辿り着かず、同じ道をぐるぐると回っているだけになる。
すうっと心に入り込むような、その綺麗な瞳に息が止まる。
精市と真正面から向き合い、視線を合わせたのは、久しぶりだと気付く。
何かが胸から溢れるような気がする。これはきっと一番大事なもので、忘れていたもの。
「改まって、どうしたんだい？」
今なら言えると思った。
「精市の気持ちを知りたいの」
「俺の……気持ち？」
目に見えて動揺する彼。そんな姿を初めて見た。
「精市の心には、誰が居るの？ 誰が好き、なの？」
ずっと聞きたかったこと。だけど怖かった。
「俺は――」
その先を聞かなければならないのに、耳を塞ぎたくて仕方ない。
「お前が好きだよ」
その言葉を信じられない自分が嫌になる。
「本当に？ だって精市は、Aを――」
その刹那だった。視界が急に暗くなり、優しい温かさに包まれた。
「俺は、お前だけが好きだ」
分かって、伝わって、信じられるようになる。
この瞬間、苦しいだけだった今までが塗り替えられてゆく。
「ありがとう」
涙交じりの言葉は彼の胸の中で、くぐもった声になり吐息ともに吐き出された。
「あずさの気持ちを、聞かせてくれないか」
その声に知らされたのは、精市も不安だったんだってことだった。
安心する匂いに溺れる、あたしだけのこの空間で、答えることは決まっている。
「あたしは――」
求めていたんだ、ずっと精市を。
柔らかい声、優しい腕、ときめく体温、包み込むような愛情……あたしは、あなたの全てが――
こんなに簡単で、とても大事なことなのに、不安で見えなくなっていた。
「世界で一番、精市が大好き」
きらめく花が二輪、丘の上で柔らかな風にそよいで寄り添う。
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megumi(プロフ) - かるぴんさん» コメントありがとうございます！登場人物達に寄り添ってお読み頂き、とても嬉しいです。沢山のお褒めの言葉と、作品を好いて下さり、ありがとうございます。これからも、執筆活動に勤しんでいきたいと思います！ (2021年3月5日 18時) (
レス) id: ba823ca860 (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 他の作品と比べるのは野暮かもしれませんが、今まで読んだどの小説よりも心理描写が丁寧で登場人物に共感しまくりでした。きゅんきゅんしたり苦しくなったり感情の変化が忙しかったです。2つのエンドを見れたのも嬉しかったです。何回も読み直させていただきます。 (2021年3月5日 15時) (レス) id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - YUEMINさん» コメントありがとうございます！楽しんで頂けて、作者はとても嬉しいです(*^▽^*)応援に応えられるよう、頑張りたいと思います (2019年10月21日 18時) (レス) id: d64ff74b54 (このIDを非表示/違反報告)
YUEMIN(プロフ) - 完結おめでとうございます！楽しく読ませていただきました!!次回作も頑張ってください。応援してます。 (2019年10月21日 18時) (レス) id: 1af2bac581 (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - ユッキーさん» いつも応援して下さり、ありがとうごさいました！沢山感じて頂き、嬉しく思います(^^)恋という感情は不思議ですよね。この作品を素敵と言って頂き、感謝です！ (2019年10月14日 7時) (レス) id: b41fbb72a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：megumi | 作成日時：2019年7月11日 22時
