月曜日21時のヒロイン【R.S】 (ページ12)

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ガチャリと楽屋のドアノブが回り工藤さんが戻ってくる。

「いい子だね、作間くんって。わざわざ挨拶来てくれて。」

工藤さんは私がデビューしてから約9年、
ずっと私のマネージャーをしてくれている。

時に私の母親よりお母さんでいてくれるし
お姉さんでもあり、戦友のような、そんな存在である。

そうだね。と答え私はまた台本に集中する。

このあとは雑誌の取材がある。
束の間の休憩時間でもある。

もうすぐ撮影が始まる。
休憩している暇はないみたいだ。

台本に目を通していくと年頃の男女の難しい感情が
切なく、苦しく、爽やかに描かれている。

原作の光と駿。
私と作間くんで演じる光と駿。

作間くんはどんな駿になるのだろう。
どういう風に光に接するのだろう。

少し薄れていた演じることへのワクワクが、
今想像しているこれからの日々へのドキドキが、
何故湧き上がってくるのか、

月9だから？注目されてるドラマだから？
この時の私はまだ分かっていない。

これからの日々の苦しさを。楽しさを。
前に芸能ニュースで流れてたVTRのアイドルが、
夏が来た、と叫んでいたあの気持ちが。

分かるようになるのはまだ少し先のこと。

台本を読みながら机につっぷして寝てしまった私に
工藤さんが微笑みながらタオルケットをかける。

「何赤くなってんのよ。」

そういって工藤さんは微笑んだ。初恋もまだの私に。