▽甘辛テイスティー▽ ページ31
『えーっと、お次…は？』
そんなケイトの声に"３"と書かれた紙を握りしめ、
「俺だ」
と手を上げて、大きく一歩進み出た。
『トレイくんか！ …頑張って、』
まるで俺の緊張が移ったかのように
普段よりもうんと重い口調に苦笑。
＿＿お前が緊張してどうする？
なんて、心の中で突っ込みを入れると
深呼吸の後、彼女の名前を呼んだ。
「…A・レイファント 先輩、」
「オォー」 とエペルの時同様に野太い声が会場に漂い、
それに続いて「はい、」っと鈴の音に似た心地好い声が返事をする。
「…先輩、」
「ん？」
「あ〜…っと、その…、」
そうして照れ隠しに頬を掻くと、
喉元まで出かかった言葉が腹の奥まで落下するのを感じてヤバいと感じた。
…ああ、こんな感覚は久々だ
初めての店番、
初めて親父にケーキを食べて貰った時、
初めて副寮長として寮生達の前に立った時、
そんな緊張、人生で何度も味わったはずなのに
喉は渇れ、
手は湿り、
呼吸の仕方さえ忘れそうになる。
「トレイ…？」
「っと、スミマセン、」
すぐに心配そうに覗き込む幼顔に謝罪すれば、
ペンキを塗ったように華やかに微笑む笑顔に思わず意識を奪われ、今度こそ息を忘れる。
「…大丈夫だよ、頑張って。」
そんな優しいエールと共に
柔らかな手のひらが俺の前髪を撫でると、
初めて先輩に会った時のことを思い出し
ホッと呼吸が戻った。
…そうだ、あの時も先輩から頭を＿＿
そのまま背筋を伸ばして先輩を見ると、
腹の奥底で震える言葉をつまみ上げて吐き出す。
「…先輩、
やっぱり俺も敬語を止めても良いですか？」
そんな問いに会場内が「は？」と静まれば
「ﾌﾟｯ, ｯ、アハハハッ
もちろん良いよ！」
と、軽やかで
ケーキの焼けた音のような笑い声が俺の喉を潤した。
「これからも宜しくね、トレイ。」
「こちらこそ、…A。」
そう言って、互いに握手。
これで良い
これが俺が叶えられる 最大の願い事だ
そう自分自身に言い聞かせ踵を返すと、
随分と柔らかくなった幼馴染みの目から
俺の分の涙が 一筋
人知れず流れるのを見送った＿
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のん - 今更ながら、全部読ませていただきました！素敵な小説すぎて感想書かずにはいられなくて、、。無料で読んでいいのかなっていうくらい、とっても面白かったです！もう一回最初から読んでこようと思いますっ！！ (2022年11月16日 20時) (
レス) id: fb0efb510e (このIDを非表示/違反報告)
梔(プロフ) - なのは菜さん» なのは菜さま♪(梔の名での返信失礼します♪※象牙です)推しになっていただけるなんて凄くスゴく光栄でございます！ マルディアはダンボでいう周りの象ズの集合体のつもりでしたが、どうにも嫌えなくて…(笑)好きになって頂けて嬉しい限りです！ (2022年2月14日 1時) (レス) id: fa12dc3108 (このIDを非表示/違反報告)
なのは菜(プロフ) - マルディアぁああああ゛あ゛！！！やめて！！処罰なら私が彼の代わりに受けます！！((( 前のコメで処罰が楽しみとか言ってｺﾞﾒﾝﾅｻｲ(反省文100枚ｶｷｶｷ)(とんだ手のひら返し)あ、あの…マルディアをギュッとさせてクレメンス(調子に乗るな)(推しになりました) (2022年2月3日 16時) (レス) id: 8019e5d7e3 (このIDを非表示/違反報告)
象牙 - ゆいさん» ゆい様！最後まで見てくださってありがとうございます！トンパさんを気に入っていただけてすっごく嬉しい…(喜) おまけ話 後半にも彼は登場しますので楽しんで貰えると嬉しいです！ (2022年2月3日 2時) (レス) id: fa12dc3108 (このIDを非表示/違反報告)
象牙 - うみさん» うみ様！こちらこそ、素敵な感想をありがとうございます！長く引き延ばしてしまいましたが、その中でも様々に受け取ってもらえて凄く嬉しいです！本当にありがとうございました！ (2022年2月3日 2時) (レス) id: fa12dc3108 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：象牙 | 作成日時：2021年12月27日 0時
