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名前と思い出リフレイン/fkr ページ41

*

しまい込んで存在さえも忘れかけていたものたちを、不意に見つけることがある。決してなおざりにしていたわけではなくて、大切に大切にしまっておいた結果なんだけど。

「…あ、」

小さなA5サイズのファイル。昔のアルバムなんかと一緒に仕舞われていたそれに、何故か引き寄せられる。何も入っていないのか、と仕舞い直そうとすると、ひらり1枚、黄色の付箋が抜け落ちた。

もう粘着力を失った付箋を拾い上げ、くるりと表を返す。胸がきゅうと締め付けられるような郷愁に駆られるのは、あの頃の甘酸っぱい気持ちのせいだろうか。



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Aさん

来週日曜、11時に時計台のところで。

福良
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簡素なたった一言のために書かれた付箋を、過去の私は後生大事に取っておいていた。もう何年も前になるというのに、ちゃんと保管していた自分に驚いた。

「懐かしいなぁ」

親指の腹で自分の名前の部分を撫でると、なんだかあの頃のことを鮮明に思い出せるような気がする。

今はもう呼んではくれないその苗字が、急に恋しく感じた。



「Aさん」



俄に降ってきた声にハッとして顔を上げると、拳くんが私を見つめていた。娘を寝かしつけてくる、と先程部屋を出ていったばかりのはずなんだけど。彼の手際の良さには、舌を巻くばかりだ。

「なに、びっくりした」

結婚してもう何年かが経った。A、とかママ、とか呼び方は変わったが、苗字で呼ばれるのは久しぶりのことで、咄嗟には頭が回らなかった。


「…ちょっとコンビニ行ってくるね」

「え?ああ…はい」


それだけ言って、彼は微笑んだ。そっと、私の手にメモを握らせてから。



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A

明日、10時に時計台のところで。
子供は預けてくるから大丈夫。


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もう、こういうことをさらりとやってのける、この人が好きなんだ。子供を寝かしつける間に、棚の整理でもしたらと言ったのは彼だった。らしくもない、可愛いアネモネのメモカードを買っていたのも。

「…大好きだよ、拳くん」

玄関先で靴紐を結び直す彼の背中に、私の愛と抱きついた。

並ぶ名前と背中の体温/kwmr→←名遠からじ、幸となす/izw



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てんしゅ(プロフ) - 初めまして。いつもドキドキしながら読ませていただいております。「香りにキスして」の煙草はアークロイヤルのパラダイスティーかな?と想像しました。自分もアークを吸っているのでにやにやしてしまいました。これからも応援してます。 (2020年12月7日 20時) (レス) id: 02b4360ac3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:エリッサ | 作成日時:2020年9月26日 13時

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