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「ほっぺたに右手当てて悩むの、俺と一緒だなあって思ってさ」
彼がぺたりと自分の頬に手を当てた。それを見てストン、腑に落ちる。あ、そういうこと?確かに拳くんがよくやってるような気はするけど…
「前はあんまりしなかったのに、俺と付き合い始めてからやるようになったよね」
再び思考が止まった。……そう、なの?自分で意識したことなんてもちろんない。拳くんと付き合うようになって、見ているうちに段々と癖が移ってしまったのだろうか。
好きな人の癖は移る、とは聞いたことがあるけど、それが自分に当てはまるとは思わなかった。
「だから、可愛いなあって」
そう言ってニコニコと私を見つめる彼の視線が、なんだか恥ずかしい。ぷいと視線を逸らしてみても、彼が私を見つめているのが分かってしまうほどに、視線が刺さる。
「わ、私…資料の改善点聞きたかったんだけど」
羞恥に耐えられなくなった私は、完全に逸れた話題を元の路線に戻した。話を戻されたことに彼は不服そうだったけど、諦めたのかずい、と画面を覗き込んだ。
「えぇ、このままでいいと思うけどなあ…」
まあでも直すんだったらこことか?と彼の細い指が画面を軽く叩く。訊いた以上きちんとアドバイスをしてくれたんだけど、私の頭には全く入ってこなかった。いや、入ってくるわけない。
俺と同じだね、なんて言われて、これからどうしたらいいんだろう。右手を頬に当てる度、思い出してしまったらどうしよう。そう考えるだけできゅう、と胸が締め付けられてしまうくらい、私は拳くんのことが好きだった。
「ああもう、どうしよう…!」
ポートレートの袖/kwmr→←右手で招くは好きの自覚/fkr
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てんしゅ(プロフ) - 初めまして。いつもドキドキしながら読ませていただいております。「香りにキスして」の煙草はアークロイヤルのパラダイスティーかな?と想像しました。自分もアークを吸っているのでにやにやしてしまいました。これからも応援してます。 (2020年12月7日 20時) (レス) id: 02b4360ac3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:エリッサ | 作成日時:2020年9月26日 13時