偽りの仮面は知っている

5.これからのこと　 ページ5

彩saido

犯人は捕まっていないって言ってたし、

ママにとってはそれが1番不安かもしれないな。

よし、私がママの代わりに、家事を頑張ろう！

病院にお見舞いに行った時なんかに、「大丈夫だよ」って

笑顔で言えるように！

あ、このことKZにも伝えてた方がいいよね？

今日あんな事があったばかりだけど、

何か事件があった時に時間を取るのが難しいってことは

伝えておかないと、「なんで言ってくれなかったんだ」

って、言われちゃいそうだしね。

そう思い、私は受話器に手をかけたんだ。

プルルルル……プッ

小塚「もしもし、アーヤ？」

彩「もしもし、小塚君。実は話したい事があって……」

電話に出てくれたことに安心しつつ、

私はママが事故に遭ってしまったから、当分の間

忙しくなることを伝えた。

小塚君は息を呑んで聞いていたけど、最後に

小塚「無理はしないでね。」

と言ってくれたんだ。

彩「うん、ありがと。」

そう伝えて電話を切る。

そして小塚君の気遣いに、色々な感情が混ざり合って

しまった私は……

堪えていた涙を流してしまったんだ。

パパから連絡が来た時、本当はすっごく怖かった。

でも、奈子のことを考えると、長女の私が悲しんでたら

パパの負担が増えちゃうって思っちゃって……

出来るだけ、明るく振る舞ってみせた。

……不安じゃないわけないのに、ね。

こういう時、素直に辛いって言える奈子が羨ましいって

思うんだ。

私はきっと、色々我慢しすぎちゃってるのかもしれない

な。

人が1番怖いのは「変化」だって、パパが言ってた。

新しいことはどうすれば良いのか分からなくてたくさん

迷うし、慣れない事が多くて、いっぱいいっぱいに

なっちゃうから、余裕がなくなるだって。

そしたら、他のことを考える余裕がなくなって、

好きなことも楽しいって思えなくなるから、

「変化」を恐れてしまうって言ってた。

今がきっとその「変化」なんだろうな。

ママが事故にあって、家に居ないっていう当たり前じゃ

なくなるから。

……だから、ここが1番の踏ん張りどきでもあるよね。

これから、頑張ろう！

気合いを入れて、私は眠りについたんだ。

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