存在意義 2 ページ7
赤く色付いたトマトを溢れんばかりに入れたそれぞれのカゴをゆっくりと床に降ろし、クラサとひとらんらんはホッと安堵の息を吐く。
クラサに至っては彼の真似をしてそれっぽい音を出した、と言うのが正しいだろう。
「流石クラサだね。ゾムの行動パターンまで読めてるなんて」
「いえ、ただの偶然です」
謙遜するクラサへ「とにかくありがと」と柔らかい笑みを浮かべたひとらんらんは、日本刀を傍らに置くとその場へしゃがみ込む。
そして慎重に手に取ったトマトの様子を確認し始めた。
彼がゾムを血眼で探していた理由は非常に単純。
一通り収穫を終え長期保管の為の部屋へと移されていたトマトが2カゴ、突如姿を消したのだ。
決して軽くはないそれが消えた事で焦るひとらんらんが発見したのは、カゴが置いてあった位置に残された1枚のメモ。
ートマトなんか滅べ！！
その文字は怒りに震える彼の手の中でグシャリと歪む。
恐らく犯人はゾムだと目星をつけたひとらんらんは、朝から愛刀を片手に城中を駆け回っていたらしい。
彼がやって来る寸前にゾムがそそくさと食堂を出ていった事から、目星は間違っていないのだろう。
「帰ってきて早々によくこんな悪戯するよね」
トマトに傷も傷みも見られない事で少々落ち着きを取り戻したのか、ひとらんらんの口調は怒りよりも呆れの色が濃くなる。
「トマトを含めたカゴの重さは約21kｇ。トマトを傷付けない事を条件とするのであれば1人で一度にカゴを２つ運ぶ事は不可能だと考えられます」
「丁寧に扱ってくれた事に免じて仕返しは軽めにしようかな……」
今晩はトマト料理がいいな、と呟いたひとらんらんへクラサが頷く。
「トマトを使ったご夕食を作らせていただきます」
「あ、今日はクラサが担当なんだ。なら丁度いいね。俺が作るとトマト祭りになりそう」
純粋に仕返しへ苦手な食材を使おうとするひとらんらんに対し、クラサは「苦手な食材を気付かれないように食べさせる」をモットーに夕食を作る。
彼女がひとらんらんのリクエストに乗っかったのは、その計画のターゲットにされる幹部が日毎に異なり、今回がたまたまゾムだったと言う訳だろう。
食料庫を後にし、他愛の無い話に花を咲かせる二人。
ふと何かを思い出したように歩調を緩め、クラサは唐突にあの質問を口にした。
「ひとらん様、
私に存在意義はあるとお思いになられますか」
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CrazyBook(プロフ) - 鳥類志望さん» コメントありがとうございます。本当に不定期で遅い更新ですが、気長にお付き合いくださいね！ (2020年7月27日 6時) (
レス) id: 89127ffd6d (このIDを非表示/違反報告)
鳥類志望(プロフ) - コメント失礼いたします。以前コメントさせていただいたキツネというものです。また更新再開していただいてとても嬉しいです。また更新頑張ってください、応援しております。 (2020年5月9日 6時) (レス) id: 5b352d10cf (このIDを非表示/違反報告)
CrazyBook(プロフ) - コメント、ありがとうございます！更新が滞っていて申し訳ありません。時間はかかりますが、必ず完結には持っていきますので気長にお付き合いください。 (2019年8月12日 8時) (レス) id: 89127ffd6d (このIDを非表示/違反報告)
キツネ(プロフ) - はじめまして、コメント失礼致します。当方、こちらの作品が作成された当初から閲覧させていただいておりますがとても面白く、文章も綺麗で大好きな作品です。お忙しい中更新大変かと思われますが応援しておりますね。 (2019年7月25日 10時) (レス) id: 5b352d10cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：CrazyBook | 作成日時：2019年1月8日 23時
