存在意義 4 ページ21
モニターの数をふと数えてみる。
縦に7つ、横に12、
部屋の構造上4つほど虫食いになった場所があるにしても、80のモニターがずらりと壁を覆っている。
その画面を同時に監視し目を離すことなく、時折キーボードをカタカタと女性のように細く少し爪の長い指で叩いていく。
「慣れておられますね」
「こんな僕でも古株やからね、慣れてへんと流石にアカンやろ」
「確か……我々国の建国当初からおられたとお聞きしました」
「よぉ知ってんねクラサちゃんは。あ、吸ってえぇ？」
クラサが小さく頷けば「ありがと」と小さく呟いて大先生は煙草をくわえる。
オイルライターを取り出して小さな火を灯し、尖端を紅く染める。
胸を大きく膨らませて体を背もたれに預け、天井に向けて気の抜けた紫煙を吐き出した。
部屋が全体的に白く濁るもクラサは特に嫌な顔をすることもなく、傍らに置いてあった灰皿を彼の前へ滑らせる。
既に山を作った吸殻の中に短くなった新入りを押し付け、大先生は再び「ありがと」と呟いた。
連続して2本目を吸わなかったのは彼にしては珍しいだろう。
「ご喫煙はいつ頃からなのですか？」
「ん？気付いた時には吸ってたで。他の悪い癖も同様に」
ふにゃりとだが少々自傷気味に笑った彼に、クラサは数秒の間を置いてようやく理解が追い付いたように頷いて見せた。
「ですが鬱様はきちんと我々国を支えておられます。ご喫煙も女遊びも特に問題は見られないと考えられます」
「んふふ、ありがとな。けど褒めても何も出ぇへんし、心配せんでもとっくにクラサちゃんも我々国には欠かせない存在やろ」
相変わらずのらりくらりと話す彼に図星を突かれ、クラサは目と口を開いたままに思わずスリープモード並みに黙り込んでしまう。
「クラサちゃんは時間の無駄遣いせぇへんからな。何か目的があるんやろな、て思てたんよ」
モニターから一瞬ずらした「どしたん？」と言いたげな大先生の瞳と、クラサの視線がぶつかる。
「……失敗作である私はこの国に必要なのでしょうか」
珍しく不安の色を覗かせる声色に、大先生は数度瞬きをして上唇を一度軽く舌先でチロリと舐める。
残り少なくなったコーヒーを一気に煽り、空になったマグカップをパソコンの隣に並べる。
お代わりを注ごうとするクラサの手を遮り、大先生は口を開いた。
「そんなに心配なら……気休めになれそうな話でもするわ」
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CrazyBook(プロフ) - 鳥類志望さん» コメントありがとうございます。本当に不定期で遅い更新ですが、気長にお付き合いくださいね！ (2020年7月27日 6時) (
レス) id: 89127ffd6d (このIDを非表示/違反報告)
鳥類志望(プロフ) - コメント失礼いたします。以前コメントさせていただいたキツネというものです。また更新再開していただいてとても嬉しいです。また更新頑張ってください、応援しております。 (2020年5月9日 6時) (レス) id: 5b352d10cf (このIDを非表示/違反報告)
CrazyBook(プロフ) - コメント、ありがとうございます！更新が滞っていて申し訳ありません。時間はかかりますが、必ず完結には持っていきますので気長にお付き合いください。 (2019年8月12日 8時) (レス) id: 89127ffd6d (このIDを非表示/違反報告)
キツネ(プロフ) - はじめまして、コメント失礼致します。当方、こちらの作品が作成された当初から閲覧させていただいておりますがとても面白く、文章も綺麗で大好きな作品です。お忙しい中更新大変かと思われますが応援しておりますね。 (2019年7月25日 10時) (レス) id: 5b352d10cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：CrazyBook | 作成日時：2019年1月8日 23時
