南東の空 ページ15
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それから、普段どおり生存報告のような簡単なLINEをお互いに日に数回残すだけ。
会えない分、声だけでも聞きたいのに、電話は一度もしないまま。
言い訳はいくらでもあって…
仕事中にこっちからかけるのは迷惑だからやめとこう…とか、
何か必要があれば、LINEにもっと違うメッセージがくるだろうし…とか、
声が聞きたかったら和也からかけてくるよね…とか。
そもそも、和也のメッセージからかなり忙しいのが看てとれて、とてもかける気にはなれないし。
でも、実際はそんなのホントに言い訳で。
たとえ、電話ができる状況だったとしても、会えない代わりに声を聞きたい気持ちと、会いたくなるから声を聞きたくない気持ちの間で、私はぐらぐら揺れていた。
結局、平気でいられる自信がなくて、電話なんてできなかった。
＋＋＋
そして迎えた、ライブ初日。
ありがたいことに、仕事は土日の出勤は免れたので、二日間自由に使える。
和也とも友達とも過ごさない、自分のためだけの連休は、久しぶりかも。
ライブは今日と明日の二日間だ。
“いよいよだね、頑張ってね！”
起きてすぐ和也にメッセージを送り、カーテンと窓を大きく開けて空気を入れ替えた。
私のビューイングは二日目の日曜日なので、予定では今日は自宅の片づけや掃除をするつもり…
だった。
ところが…
朝から面白いようにソワソワして、何も手につかない。
同じ棚の物を出しては入れてを繰り返してみたり…
拭き掃除でどこまで拭いたのかわからなくなってみたり…
洗濯物を何度も畳んでは開いて、また畳み直し…
ああ、全然片付かなくて、笑ってしまう。
仕方ない…
開き直って、今日と明日はどっぷり和也に浸ろう！
そう決めて、しばらく見れていなかった録り貯めていた和也の出てる番組を見ることにした。
その前に置いたままだったスマホが目に入り、LINEのメッセージが入っていたことに気付いて慌てて開く。
“おう！今からスタンバイ。”
という簡単な返信。
気付かなかったけど、どうやら、かなり前に届いていたらしい。
今の時刻は午後０時１５分。
あと少しで始まる…。
ベランダに出て、南東の空を見上げた。
雲ひとつない青空、ではないけれど、すごしやすい曇り空。
ハワイはきっと今日も暑いんだろうな…。
……。
私はスマホを抱き締めて目を閉じ、ひとり、ライブの成功を祈った。
＋＋＋
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作者名：kico
| 作成日時：2014年9月28日 15時
