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細くても力強い左手をしっかり掴むと、地面を蹴った身体は勢いよくテラスへと引き上げられた。
一瞬で切り替わる視点。
「わ…ほんとだ…」
和也の言う通り…。
そこから見る桜は、またとても綺麗。
「ありがと///」
「どーいたしまして。…すげー重かったけど(笑)」
「えっ！うそ！？」
「あーまずいなー。こりゃー腕が折れたかもしんない。
帰ってからたっぷりサービスしてもらわないと、治んねーな(笑)」
「…バカ(笑)！」
軽くぱちんと背中を叩くと、「いって！背骨も折れたわ(笑)！」と大袈裟にのけ反られた。
＋＋＋
ひらり、ひらりと桜が舞っていく光景を眺めながら、２人で並んでウッドデッキに座る。
静かな空間に、風の音と桜の枝が揺れる音、遠くに聞こえる鳥の声…。
「こんな風にゆっくりと桜を眺めたことなんてないかも…」
「そーだな…オレもデビューしたての頃、ここでうちの人たちとバカ騒ぎしたとき以来じゃねーかなあ。
撮影やロケなんかで桜を見る機会はあっても仕事に集中してるし、たまーに呼ばれて花見に行った時だって、もはや酒飲んでハナシすんのが目的だって思ってっからね」
「同じだよ。職場のお花見なんて、ホントただの宴会だもの」
「ま、それがさ、日本の花見の文化、ってやつなんじゃないの(笑)？」
コーヒーちょーだいよ、と言われて、はい、とバッグの中のステンレスボトルを渡す。
コップ付きで、飲み口もついた魔法瓶タイプ。
保温力がすごく高くて、いつも職場で重宝している。
「…あれ、Aの水筒、飲み口ついてたっけ？」
「うん。私は普段はコップでしか飲まないけれど、直飲みもできるよ」
「へー今まで気付かなかったわ。
すげーな…こーいう両用タイプもあんだなー」
和也が、珍しそうにボトルの構造を眺めてる。
新しいおもちゃを見つけた子供みたいで、どこか微笑ましい。
「直接飲む時はこのストッパーを外して…あ、でも、それ保温力が高いから…」
「はいはい、これね」
説明の途中でストッパーを外した和也は、最後まで聞かずに、口を付けるや否やゴクリといきなり飲んだ。
「…あ！」
「っ！！熱っつっ！！」
「だ、大丈夫！？
ごめん、それ保温力が高いから、熱い飲み物は少しずつ飲んだ方がいいよ…って言おうと思ったんだけど…」
「おっせーよ、バカ(笑)」
「イタッ(笑)！」
何かあるたびピンと額を弾かれるのも、もう慣れっこになってる気がするよ。
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kico(プロフ) - ゆうきさん» 初めまして。自己満足で書いてきた勝手な妄想ですが楽しんで頂けたのなら嬉しいです。もう新しいお話は書きませんが、いつかどこかで何かのご縁があった時には♪どのお話にも愛だけは目いっぱい籠めて書いてきました。最期まで読んでくださってありがとうございました^^ (2020年10月12日 9時) (
レス) id: 890f6f329d (このIDを非表示/違反報告)
ゆうき(プロフ) - 初めて送ります…ウラつく読者デビューは、この作品でした。とても楽しく読ませて貰いました。もっと読みたいなあと言うのが正直な気持ちです。 (2020年10月9日 20時) (レス) id: 62321c58f8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kico
| 作成日時：2016年3月26日 12時
