6k ページ20
＋＋＋
楽屋で相葉さんから早咲きの桜の話が出たのは、いつだっけ。
もともとは、大野さんとＪが、ツアー曲に振りを付けるために、郊外にある事務所の合宿所を嵐名義で１カ月ほど借り上げたとこからスタートした話。
たまたま、オレはオレで兄さん家にAと行くことにしたって話をうちの人たちにしてた時で。
そしたら、相葉さんからすげーハイテンションで『ニノ、Aちゃんと一緒に出掛けんの！？だったら、ちょっと遠回りしてさ、Aちゃんと合宿所の桜、見に行って来なよ！！』って勧められて。
いつもなら、興味がないことはハイハイって笑って終わり。
遠回りなんて性に合わないこともしない性分なのよ。
だけど、ふと…
Aがリビングで花見特集のタウン誌を嬉しそうに読んでいたのを思い出して。
ああ、Aも花見ってやつをやりたいのかもしんないなー…って。
どっかに連れてってとか、一緒に出掛けてみたいのとか、そーいうことは言わないヒトだからね。
これ見よがしに行きたい場所をパソコンで開いて見せたりとか、どっかに行った人の話を羨ましそうにしてみたりとか、そーいうのも一切ない。
そのタウン誌も、オレの前で開いてたのはその時だけ。
別の日にゲーム機の箱を探して偶然クローゼットの右扉を開いてみたら、Aのスペースに映画雑誌と一緒にこっそりと仕舞ってあった。
『私もインドア派だから、一緒に出掛けたりできなくても不満じゃないよ』って、いっつもAは当然みたいに言うのよ。
勿論、そこに嘘がないのも知ってるけど。
でもさ。
もしそんなAにささやかな願いが生まれた時には、オレだって叶えてやりたいって、やっぱ思っちゃうもんなんだなって。
ま、いーじゃない、たまには。
不満じゃなくても色々我慢させてんのは確かだし。
結果的にオレの勘違いだった訳だけど、あん時思ったんだよ。
Aとなら。ちょっとくらいなら、そーいうの行ってみてもいーかな…ってね。
＋＋＋
付き合って５年が経ったけど、A連れて車で出掛けたなんて何回かしかない。
それもスモークの貼った後ろの席ばっか。
まともなドライブすら碌にできなくて、きっと心の中で寂しい思いもさせてるとは思うけど。
それでもさ、これが２人で選んだ現実じゃん。
だからさ、せめて今日くらいは、その現実の枠ギリギリでも、目一杯Aが楽しめたら、それでいーかなって。
そう思いながら、オレは後部座席をチラリと見た。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1111人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
kico(プロフ) - ゆうきさん» 初めまして。自己満足で書いてきた勝手な妄想ですが楽しんで頂けたのなら嬉しいです。もう新しいお話は書きませんが、いつかどこかで何かのご縁があった時には♪どのお話にも愛だけは目いっぱい籠めて書いてきました。最期まで読んでくださってありがとうございました^^ (2020年10月12日 9時) (
レス) id: 890f6f329d (このIDを非表示/違反報告)
ゆうき(プロフ) - 初めて送ります…ウラつく読者デビューは、この作品でした。とても楽しく読ませて貰いました。もっと読みたいなあと言うのが正直な気持ちです。 (2020年10月9日 20時) (レス) id: 62321c58f8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：kico
| 作成日時：2016年3月26日 12時
