むこう ページ4
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私が関係することで何かあれば、和也はちゃんと言葉にして言ってくれるってわかってるし、私が聞いてもいいことは、和也の話し方で何となくわかる。
さっきみたいに、和也が何の反応も見せなかったり、真顔であっさりと返してきたりするのは、私に関係しない時。
私が心配しても何もできない時だ。
だったら、私は私ができることをするだけ…。
手元のシャツに顔を埋めて目を閉じてみると…
幸せな洗濯物の匂いに混じって、やっぱり微かに感じる和也の匂い。
ねえ、和也…。
たまに本音で零してくれる冗談で薄めた愚痴を、一緒に笑って聞くことくらいしかできないのはすごくもどかしいけれど。
でもね、私はいつだってしっかりと見てるよ。
和也に恥ずかしくないように、私は私なりに自分のできることを精一杯やりながら、いつでも和也の一番近くで応援しているから…。
「…何やってんの(笑)」
「え///！？」
後ろから声がしてハッと顔を上げると、お風呂から上がった和也がタオルで頭をガシガシと乱暴に拭きながら立っている。
「な、なんでもないよ！」
慌ててチェックのシャツを下に置き、次の洗濯物を畳み始めると、和也は濡れた髪をガシガシとタオルで拭きながら、ドスンと隣に座ってゲーム機のコントローラーを手に取った。
あ、石鹸の匂い…。いつもの和也のお風呂上がりの匂いだ。
そっと横を盗み見ると、さっきまでの疲れたような表情はもう見て取れなかった。
良かったな…どこか吹っ切れた感じがする。
「…何よ？」
「ううん(笑)」
「すっげー締まりのない顔してんだけど、何かあった？」
「ああ、和也だな…って思っただけ(笑)」
「は、何それ(笑)！」
苦笑した和也をそのままに洗濯物をまた畳みはじめると、そんな私を和也は顎を摩りながら横から眺めて、何か思いついたようにニヤリと笑った。
「…ね、A、ちょっとむこう向いてみて？」
「え？」
顔を上げると、和也が斜め後ろを指さしている。
「？むこうって…後ろ？」
「そ、リビングのドアの方。身体ごと向いてみてよ」
「…？」
よくわからないけど、言われた方を向いて背中を見せたら…。
「よいしょ。あー、やっぱちょうどいいなー」
座ったままで背中合わせにぐーっと体重をかけられた。
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作者名：kico
| 作成日時：2016年7月2日 7時
