還る場所 ページ3
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フェイスタオルに、バスタオルに、私のTシャツ。
手当たり次第にどんどん畳んでいく。
次に手に取ったのは、和也のシャツだった。
サラッとした綿素材で、何年も前から着てるチェック柄のシャツ。
いつも思うけど、和也は本当に物持ちが良い。
私も同じものを長く使う方だから、和也に「なーに言ってんの、そんなのAだって同じでしょ？」って言われちゃうけれど、きっと私の比じゃないよ。
少し残っているしわを綺麗に伸ばして畳み終えると、幸せな洗濯物の匂いに混じって、ふと安心できる匂いを感じた。
ああ、これは…和也の匂いだ。
＋＋＋
今年も年度末からGWにかけての一番の繁忙期が終わり、６月に入ると電話や来訪のお客様件数もずいぶん落ち着いてきた。
それでも、繁忙期に積み残している仕事がたくさんあって、日常業務と並行して残務処理をしながらの毎日。
今日みたいに定時に帰れる日もあるけれど、そうでない日もまだ多い。
育児休業中のアイちゃんの後任の後輩指導と、新たに始まった局内コンプライアンス会議の担当補佐という仕事も増えて、まだまだ忙しい日々が続いているけれど。
頑張ってる和也に負けないように、私もしっかり前を向いて頑張っているよ。
社会人として仕事をしていたら、楽しいことばかりじゃない。
考えるようには進まないことだってたくさんあるし、イヤな思いをしたり、つらいことだってある。やりたくない仕事だってある。
普通の事務職の私ですら、毎日いろんな思いを抱えて仕事をしているんだもの。
たくさんの人たちに支えられていて、たくさんの人たちのいろんなものを背負って前に進まなければいけない和也たちは、きっと私以上にいろんな思いをしているんだと思う。
楽しいこと嬉しいことも、たくさんあるんだろうけど、きっとそれだけじゃない。
そうじゃないこともきっとたくさん。
難しいこともきっとたくさん。
でも、そんなたくさんのものを背負いながら、和也たちはあんなに輝いて、たくさんの人たちを幸せにするお仕事をしているんだから、すごいよ。
本当に和也たちはすごいと思う。
話してくれる範囲で何となくしか、未だに和也の仕事のことがよく分かっていない私は、きっと和也の相談相手にもならなくて。
ねえ、和也…
私は本当に和也の還る場所になれてるのかな…？
本音を言うと、ほんの少しだけ不安になる。
だけどね、そこは私が勝手に立ち入れない領域だと思うから。
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作者名：kico
| 作成日時：2016年7月2日 7時
