きみを待っていた

after that ページ36

Y side


S)ほんと、長かったね。


5人で久しぶりに来た飲み屋。乾杯を済ませて料理が運ばれてきたタイミングで千ちゃんがほろりと口にする。


2)いや、びっくりでしょ。本人が気づいてないって。


太輔がミツと話してから何ヵ月かして、付き合うことになりましたと嬉しそうな太輔と恥ずかしそうなミツから報告を受けた。ミツが太輔のことをすきだと自覚したのが付き合った日だと言われたのには全員開いた口がふさがらなかった。確かに誰もミツから太輔のことをすきだとは聞いてはいなかったが、暗黙の了解だったし、あれだけ寂しそうな目で太輔のことを追っていたくせに無自覚だったことに呆れたものだった。


Y)まぁそれがミツだよねぇ…

S)ま、幸せそうだからいいんじゃない？


今日は2人はデートらしく、この場にはいない。外に出ることはなかなか出来ないけれど、ドライブやら買い物やら2人で出来ることを見つけて楽しんでいるらしい。


Y)ニカはちょっとさみしい？

2)なんでよ！

Y)お兄ちゃん取られちゃって。あ、お姉ちゃんも？

2)ばかじゃないの？


取られてないし！と言いながら少し寂しそうな顔をしたのは見間違いでもないだろう。


S)でもニカがガヤさんにあんな怒るのびっくりしたもんねー

2)いや、なんかもう我慢できなかった。分かってたけどまじでだるい、って思ったもん。


そう言って苦笑いをしたニカはビールを一気に流し込んだ。


S)それからの徹底ぶりは凄かったしね。

M)ずっと一緒にいたし、連絡もマメに取ってたもんねぇ


そうだ。7人での仕事のときは絶えず側にいて、太輔の方には一切近づけようとしなかった。水やら弁当やらが太輔の近くにあるときは全部ニカが取りに来ていたなぁ。


Y)太輔ほんとに凹んでたよ。どーしよどーしよ、ってずっと言ってたし。

M)きたやんは分かってないしね。


ほんとに大変だった。敵認定されちゃったから俺も近づけなくなっちゃったしね。


T)まぁ、ニカがあぁやって動いたから収まるとこに収まったんだし、良かったんじゃない？

2)二人とも幸せなら、それでいいよ。


さ、のむよー！と追加の注文を募りながら照れ臭そうにするニカはきっとこうなることをずっと望んでいて、だけどなかなか上手くいかないことをもどかしく思っていたのかもしれない。

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