きみを待っていた

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Ki side


「わかんな、い。お前と今までその、仕事の話しかしてないし、あの…」

「うん、」

「嫌われてると思ってたし、」


だってそうだろ？話さない、目も合わない、必要最低限の会話。あの笑顔もあの優しさも全部、全部、俺だけが見せてもらえなくて。


「辞めろって言われるんだと思ってたし、」

「…そ、ぅ、」

「一緒にいるのが、想像つかない、んだよね、」


それがいきなりすきだから恋人になって、なんて。藤ヶ谷の話を信じないわけじゃない。だけどほんとに想像ができない。一緒にいる未来が。


「そぅ、だよね…」


藤ヶ谷が悲しそうな、寂しそうな声で答えた。その声が罪悪感をつれてくる。


「ごめ、」

「ねぇ、きたやま？」


思わず出た謝罪の言葉は最後まで聞かれることもなく名前を呼ばれた。


「俺がすきって言ったのは？気持ちわるくないの？」

「え？あ、あぁ、え？あ、うん、気持ち悪いとかはない。戸惑ってるだけで…」


気持ち悪…くはないな。うん。嫌われてなかったんだって安心してるし。


「一緒にいる想像ができれば、一緒にいてもいいかなって思ってもらえる可能性ある？」

「え？あ、えっと、そう、だな？」


そう、なの？俺。わかんない。だけど嫌な気はしない。藤ヶ谷に笑いかけてもらえるなら、それはそれで嬉しい、かも。


………

「ふじがや、？」


黙って何かを考えるように一点をみつめる横顔に見惚れそうになりながら声をかける。


「うん、じゃあ俺頑張ってもいい？」

「へぁ？」

「きたやまが信じられるまで、一緒にいてもいいと思えるまで、頑張ってもいい？」


え、え？頑張る？俺が一緒にいると思えるまで？なにを頑張んの？


「大事に思ってるって、伝えさせて欲しい。それ見てから考えてほしいんだけど、だめかな。」


切れ長の目が○んで俺を見上げてくる。こんな顔、初めて見た。


「きたやま、お願い」


こんな顔に見つめられて、懇願するような声で言われて、断れるやついるんだろうか。


「わ、かっ、た。」


途切れ途切れに頷いた俺にありがと、と微笑んだ藤ヶ谷の顔はやっぱりかっこよかった。

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