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Ki side
「きたやま、」
2人になった部屋に響いた声。その声はいつもの声じゃなくて、なんだか遥か昔、出会った頃まで戻ったような甘さで。なんで、そんな残酷な。
………
「混乱させたね。嫌な思いもさせた。まずはごめん。」
………
ごめん、と謝られることなどもうないのに。なぁ、もういいよ。最後までいつもの藤ヶ谷でいてくれよ。俺はもう、覚悟を決めたから。
「全部答えるよ。きたやまは聞きたいことある?」
そう言って一歩、俺の方へ近づいた藤ヶ谷。いま気になることは一つだけ。
「…ニカとは、和解したのか。」
「うん。そもそも喧嘩じゃないしね。ちゃんと話してあるから大丈夫。渉もね。」
そうか。ならいいんだ。もうみんな納得したってことだろ。そうか。そうだよな。それでいい。俺一人よりも、グループを大切に守って、次に繋げて言ってくれればそれで。
「じゃあもういい。あとは聞きたくない。」
「きたやま、」
「俺になんて話さなくていい。お前らだけで決めたんだろ?俺はもういいから。」
………
ふぅ、と大きく息を吐いた。さぁ、メインイベントだ。お前は本当は優しい人だから切り出しにくいだろう?だから、俺から。これが最後の仕事だから。
「なぁ、ふじがや、」
「なに…?」
久しぶりに、視線が絡んだ。
いつぶりにお前の顔を正面からちゃんと見たのだろう。相変わらず綺麗な顔してんな。ふわふわの髪、切れ長の瞳、彫刻のような高い鼻筋、厚めの唇、シャープな輪郭。全てが完璧に揃った美しい顔。俺は見せてもらえなかったけれど、柔らかく笑う顔が、目尻が下がって楽しそうに笑う顔が、心配そうに眉が下がって潤む瞳が、きりっとかっこいい顔をしながら可愛らしいものが大好きなお前の全てが、大切だったよ。
「おれ、もう要らないなら、お前がはっきりそう言って。」
「……!」
「分かってるから。やめて欲しいんだろ?俺に。悪かったな。嫌われてんのはわかってたけど、そこまでだって気付くの遅れてさ。もう覚悟決めたから。だからお前が言って。そしたら、そしたらさ、」
悔いがないわけじゃない。だけど、このままでいる方が悔いることになりそうだ。なぁ、お前の思う通りにするからさ。最後くらい聞いてくれよ。お前から、俺に引導を渡してくれよ。そうすれば、俺は、
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imtr(プロフ) - まいまいさん» まいまいさん コメントありがとうございます!面白いと言ってもらえて嬉しいです!もう少し続いていきますので、引き続き楽しんでいただけるよう頑張ります! (2021年5月23日 18時) (レス) id: 768e339076 (このIDを非表示/違反報告)
まいまい(プロフ) - えー、わからない…続きが読みたくて読みたくて気になりすぎです!!面白いです。続き楽しみにしています! (2021年5月23日 0時) (レス) id: d8ffbdef31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:imtr | 作成日時:2021年5月19日 12時