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Ki side
コンコン、
「はい」
AD)すみま、せん、そろそろスタンバイお願いしま、す。
ドアから顔を出したADさんは控室のただならぬ空気を感じ取ったのか、かけた言葉が所々詰まっている
「すぐいきますねー」
にこやかに返事をして、ドアがしまっていくのを見届ける。固まった空気のなか仕事はちゃんとやれ、と言い残して一人で控室を出た。誰の顔も、見たくなんてなかった。
今日が自分達だけの収録じゃなくてよかった。席も離れているし、Vを見てリアクションをするのがメインだから、ゲストさんの言動や行動を見ながらリアクションをして、司会のお二人に話をすれば違和感を覚えられることもなかった。いつものようにスタッフさんと少し会話をしてから控室へと戻る。微妙な空気を全部無視して私服に着替えたら早々に荷物をもって部屋を出た。
M)きたやん、
ぱたぱた、と後ろから走る音がして名前を呼ばれた。振り返るのは癪だったが、必要な用事かもしれないと立ち止まった。
M)少しだけ、話聞いてくれない?
「何の?」
M)さっきのことなんだけど…
「無理」
仕事に関係のあること以外は聞きたくない。宮田の言葉を冷たく遮った。
M)…そっか、じゃあまた声かけるね
宮田が悪い訳じゃないことは分かっていた。だけど止まらない自分がいた。
M)お疲れさま。
こんな態度を取っているのに宮田は怒るわけでもなくいつも通りに笑う。その姿になんだか自分が惨めに思えた。
「宮田、」
M)ん?
「ごめん…」
顔は見れなかった。それでもこの空気に謝りたかった。
M)ふふ、大丈夫。きたやんが悪いわけじゃないから。俺らが悪かったんだよ。だから謝んないで?
………
俺が悪い訳じゃない?その意味が分からない。宮田がこんなことをしているのも、さっきの空気も、全部俺が作り出したものだ。俺が悪いのに。
M)俺でもワケわかんなくなると思う。だけどみんなきたやんのこと大事に思ってて、悪気があった訳じゃないことだけ、わかってほしいな
訳が分からない、というのが顔に出ていたのか宮田はそう言うけれど、悪気があった訳じゃない、というのは納得できない。俺の知らぬところで起こっているなにか。それに知らぬまま巻き込まれている俺。大事に思っているならちゃんと説明してくれ。
「…わかんね、」
拗ねたような声だった。でも本心だった。わからない。なにも。だからイライラする。なんで教えてくんねぇの。俺はそんなにいらない存在なのか。
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imtr(プロフ) - まいまいさん» まいまいさん コメントありがとうございます!面白いと言ってもらえて嬉しいです!もう少し続いていきますので、引き続き楽しんでいただけるよう頑張ります! (2021年5月23日 18時) (レス) id: 768e339076 (このIDを非表示/違反報告)
まいまい(プロフ) - えー、わからない…続きが読みたくて読みたくて気になりすぎです!!面白いです。続き楽しみにしています! (2021年5月23日 0時) (レス) id: d8ffbdef31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:imtr | 作成日時:2021年5月19日 12時