8話 ページ9
「ウィーッス、飯持ってきたぞ…ってうおおおかわいいいい!!」
「大声で騒ぐんじゃねぇ!!」
そう言って部屋に入ってきた人を容赦なく書類のバインダーで引っ叩くマルコさん。少なくとも人の頭から鳴る音じゃなかった。大丈夫かな。
「ごめんなさいね冴……いつもああだから心配しなくても大丈夫よ」
不安なのが顔に出ていたのか、イザベラさんが私の頭を撫でながらそう言った。
「悪いな嬢ちゃん!あんまりにも可愛いからつい……
おれは四番隊隊長のサッチ!ここで飯作ってんだ!」
頭をしばかれてた人の名前はサッチさんというらしい。
失礼だけど頭がフランスパンにしか見えない。
「こいつはいい歳こいたオッサンの癖にアホみてぇなことしかしねぇけど、飯の腕は確かだから信頼していいよい」
「おい!!!オッサンはお前もだろ!!!……ま、とりあえず胃に優しそーなもん作ってきたから!食べれそうだったら食べてくれよな!」
コト、と目の前に置かれたのは野菜のスープ。上がる湯気はほんのり塩の香りがして美味しそうだ。………どうせ私が食べても、味しないけど。何かお腹に入れといた方がいいよね。
一緒に置かれたスプーンを取って、控えめに手を叩く。いただきますこそ言えないけど、気持ちがあれば大丈夫…なはず。
一口すくって食べてみると、薄すぎず濃すぎない絶妙な塩加減のスープと野菜の風味が口いっぱいに広がった。今まで食べたどのスープよりも美味しい……ってあれ?
美味しい?
わたし、何食べても味しなかったのに
それを理解した瞬間、涙が止まらなかった。
「…泣くほど不味かった?」
違う、その逆。声が出ない分首を振って否定する。
「…泣くほど美味かった、ってことだろうよい。」
「…!ははっ!!そっかそっか!!
なら、コックとしても作りがいがあるってもんよ!!」
「あぁ、泣かないで冴…折角のスープがしょっぱくなっちゃう」
優しく涙を拭ってくれるイザベラさんに、あまりにも予想外のリアクションだったのか、満面の笑みを浮かべるサッチさんと、優しい表情のマルコさん。
望んだ時は永遠に続かない。それは身を持って知ったはずのことなのに、
この人たちと、ずっといたい。
そう思ってしまった。
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ミクリ - え?もしかして五条さん呪詛師になっちゃった??マジか!妹ちゃんが亡くなったのが原因か…もしかして五条さん(兄)もワンピースの世界に飛ぶんですかね? (8月14日 21時) (レス) id: a55a9cd9ea (このIDを非表示/違反報告)
にの - 12話の最後で「えっ…?」て声が出てしまいました。これからも楽しみにしてます! (2022年10月16日 21時) (レス) @page14 id: 11a3c31381 (このIDを非表示/違反報告)
ミーコ(プロフ) - 面白かったです。一気読みしました!戦闘シーンが楽しみです。この先どうなるのか気になりますね。続き楽しみにしています! (2022年10月3日 17時) (レス) id: b974f3c01e (このIDを非表示/違反報告)
kaname(プロフ) - 面白くて一気に読みました…!更新楽しみにしてます!! (2022年8月29日 22時) (レス) @page10 id: 7565f8d7cb (このIDを非表示/違反報告)
うに - 求めていたものがここにあった...!!すきです!!!!! (2022年8月24日 18時) (レス) @page10 id: df676e7219 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鯖の塩焼き | 作成日時:2022年3月29日 16時