第40話 選んだ道 ページ40
・
そう言葉を区切ったかと思いきや、見つめられる目の距離がぐっと縮まる。
この次に来る行動を予想してしまった私は、えっ、このタイミングで？！なんて思いながらぎゅっと目を瞑る。
だが、ちゅっと音を立てて触れられたのは唇ではなく、先程口の端に負った傷。そのまま軽く舐められて、驚きを隠せない私は、目を見開いて少し後退りをする。
少し弱腰になったのを実弥は見逃さなかった。
｢な…に｣
｢これがてめえが選んだ道だ、逃げるんじゃねェ｣
…ギラギラした何かが、私の心を掴んで離さないように唇同士が触れた瞬間だった。
人混みから離れた静かな空間に響く音。一度重なった唇は、何度も角度を変えてまた重なり、息継ぎさえもさせてくれない。
だんだんと酸素を求めて苦しさを増す中、不思議と気持ち良さを感じてしまうのは、この時をずっと待ち焦がれていた証拠なのだろうか。
これが私の選んだ道、もう後戻り出来ないのだと心の中で復唱した。
｢…っは…っ実弥苦し…｣
実弥の浴衣の襟を掴んで言葉を発す。
しかし、ぱくぱくと口に空気を含んだ隙をつくかのように容赦なく口をこじ開けて入ってくる舌は、私のものを絡めとっては中々離してくれない。
ぎゅっと繋がれた左手、そしてまるで、一生離すもんかと言わんばかりに蹂躙される口内。私は瞳から涙が零れそうになりながらも、目の前にある実弥の顔を見つめた。
(…なにこれ…おかしくなる…)
初対面の人には絶対怖がられる彼が、こんなにもかっこよく見えるだなんて。なんか親戚のお姉様方に好かれる理由がわかる気がする。
なんて事を思ってると、フッと実弥の瞼が静かに上がり、私の目を見つめ返してくる。
｢…っは…なんだァ、人の顔ジロジロ見やがって…｣
二人の間を引く銀の糸の余韻に浸る間もなく、至近距離で囁かれる低い声を耳に、やっと離された口で酸素を取り込んだ。汗ばむ額に張り付いた髪の毛を払いながら、私も言葉を紡ぐ。
｢…っ幸せにするから、｣
口を開きながら、肩で息を整える。
先程から繋がれていた左手をそのまま、実弥の片手を両手で包み込んでは自分の頬に添えた。
｢っ私…実弥のこと絶対幸せにするから…逃げたりなんかしない、居なくなったりなんかしないよ…｣
その言葉に実弥は一瞬目を見開く。
私の母は物心つく前から居なかったからさほど記憶にないが、実弥は失うということがどれだけ怖いか、よく知っている。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 827人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
つきこ(プロフ) - りついちさん» 楽しんで頂けているようで嬉しいです(;_;)頑張って更新していきます！ありがとうございます^^* (2020年4月13日 20時) (
レス) id: 1520dc3908 (このIDを非表示/違反報告)
りついち - めちゃめちゃ面白いです…！！更新頑張ってください！！楽しみにしてます！！ (2020年4月12日 23時) (レス) id: 9c40eb9251 (このIDを非表示/違反報告)
つきこ(プロフ) - 零華さん» 遂に手出しましたね…！相手が未成年なのでかなりやばいですね笑 もっといちゃつかせたいです… (2020年4月12日 17時) (レス) id: 1520dc3908 (このIDを非表示/違反報告)
つきこ(プロフ) - うぐいすのしっぽさん» 楽しんで読んでいただき何よりです笑 ありがとうございます(^^) (2020年4月12日 17時) (レス) id: 1520dc3908 (このIDを非表示/違反報告)
零華 - お！ついにさねみん手を出した！！サツの出番かな？(いいぞもっとやれ！！) (2020年4月12日 15時) (レス) id: f56491ae0c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：つきこ | 作成日時：2020年4月7日 13時
