01:生き残る下弦の―。 ページ4
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痛い、痛い、痛い"い"い"い!!!!!
燃えるような暑さに見舞われ、尋常でない疼痛に襲われる鬼。
先程まで試すようにこちらを見据えていた鬼はなく、たったひとりぼっちの暗闇の中でのたうち回る。きっと、あまりの辛さに気絶でもしたのだろう。
流れ込む自分のものではない憎しみと悲しみ。
血を通し、感じられるこの感覚はまるで走馬灯のよう。
ふと思い出される、かつて童磨に鬼にされた日の感覚。
あの時に近いもの…なのだろうが今の彼はそれどころではない。
痛いのは嫌いだし、死ぬのなんてもっと嫌だ。
いくら人が恐れ、人より何倍もの力を持つのが鬼だと言われたって元を正せばただの人間なのだ。
ていうか正直さ?
他人の憎しみ?
そんなもん知ったこっちゃないよ。共感する余裕なんてないよ!!こんなに痛いんだもん!!!
途切れる意識。
遂に死んだのかな、俺。
夢現。微睡みの中、遠くで懐かしい音を鬼は耳にする。
昔よく聞いた子守唄、鬼となり年齢の観念など消えたそんな彼を子供扱いする
寝付きの悪い夜には決まって奏でられた三線の音色は、まだ鬼が人であった頃に好きだったお気に入りの一曲であった。
ていうかあの上司…俺の死に際にまで現れるの?それならせめてあわよくば珠世さんがよかったとかいう話ししていい?
死に際なんだから、それくらい祈ってもいいよね?愈史郎もそう思うだろ?
"身の程を知れ"
ですよねえええええ。
いるはずもない友人。
言うまでもなく鬼自身が見ている幻想に他ならないわけだが、夢の中でも変わらず彼はこの鬼には塩対応。最早、安定の対応と言ってもいいのだろうが。
とにもかくにも、心内で(好きなだけ)ギャン泣きした後、現実へと引き戻されることとなる。
目が覚めるとそこは、彼のよく知る場所。
万世極楽教総本部。ここもこことて決して良い場所といえるようなところではないわけだが、ここにもう何年といると実家のような感覚さえ覚えてくる。
「おはよう、雅楽」
この甘ったるいくらいに優しい(と錯覚させられる)声まで聞いてしまえば確実といえるだろう。
通わせる螺鈿は自身を写し、愛おしい玩具をみるかのように見下ろす彼の瞳は相変わらずだ。
三線を片手の彼の膝にお邪魔している状況を認識すれば、反射的に飛びのく鬼。
「遠慮しなくてもいいのに。ほらおいで、雅楽」
「ひぇぇぇぇ」
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