10：一服のとき ページ13
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それにしてもこれは立派な詐欺では？なんて、冷静になればふと思う疑問。そもそもこの鬼、男の身の上で何故遊女に扮しているのか。加え、やけに先程の恐ろしい鬼と親し気だったことも気になる。
「とりあえず、ここにずっといるのはまずいから。場所移すよ」
「は？！頭おかしいの？！なんで、鬼とふたりきりの空間にあえて行かなきゃいけないわけ？！」
「俺だって鬼殺の剣士とふたりきりとかありえないから…本当ものっすごい嫌だけど、仕方なくだから。とりあえず今すぐ死にたくないならついてきて」
「今すぐってなんだよ！！結局俺死ぬ運命なわけ？！」
「そうならないために場所移すの！！あーゆー、あんだすたんど？？」
肩で息をする両者。
どこか似た者同士のふたりの共通点は生存本能の高さだろうか。
とりあえずは利害の一致、問題を起こしたくない鬼の後を死にたくない剣士がついて歩く形となる。
長い廊下を抜け、上階へと階段を上りつきあたりの一室へと消えていく両者が訪れたのは茶室。
お茶をたてる遊女が実際にいるかなど善逸が知るわけもなかったが、目前で丁寧な所作で茶をたてる姿を美しいと思った気持ちに嘘はない。
「なんかそうしてると俺たちとなにがちがうんだって思っちゃうよ。こんなこというのどうかと思うけどさ」
「生まれたときから鬼だったわけじゃないからね、そりゃあそうだ」
「まあそうだろうけど」
口籠る理由はなんだろう。
どうしてこんなに居心地が悪い気持ちになるのだろう。
「言っとくけど俺の方が善逸よりお兄さんだから」
「どういうマウントだよ」
「へへっ、なんとなくだよ。なんか悩ませちゃったかなって思ったから」
「……無責任なやつ」
差し出された茶をいただき、"いただきます"とひとこと。
瞳を伏せ静かに外の景観を見やる鬼は一体なにを考えているのか。思考などわかるはずもない。
静まり返る一室に夜風が吹き抜ける。外からきこえる喧騒がこんなにもアンバランスだと感じさせること事態、この一室が特別なのやもしれない。
「炭治郎とあのイノシシ…それからそうだ。禰豆子ちゃんも来てるの？」
「…来てるよ」
「だよねー。ついでに言えば柱もだよね。あの人どうにかならない？困ってるんだけど…」
「俺に言っちゃうの、それ」
「お互い大変だよね。変な上司持つとさ」
微笑む横顔と視線が通うことはない。
嗚呼まただ。
なんでこいつからはこんなに寂しい音がするんだろう。
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