�鴾��� ページ29
《昨日だったんでしょ？デート》
『うん』
《どうだった？》
あれから家に帰って、冷静になって思い返した時、羽奈は顔が真っ赤になるほど恥ずかしくなった。
手を
握ってしまった。
でもそれを、ここで杏に話すのも恥ずかしくて
『映画観に行ったんだよ。あの犬のやつ』
とだけ言っておいた。
《へぇー！何か意外だね》
『吉野さん、感動もの好きなんだって』
酷いくらいに号泣したんだよってことは、
秘密にしておいてあげた。
杏の中で吉野さんは、イケメン研修医で通っているから、
号泣したと言ったらきっと、わたしみたいに可愛いとはならないはず。
何だか可哀想なので、これは2人だけの秘密。
《吉野さんとデートしたこと、祐基には言わない方がいいかもね〜》
『え、何で？』
《ん？…いや、まぁ、また前みたいに？ぶーぶーうるさいよ？きっと》
『確かに。笑 祐基、何であんなにうるさいかな〜。あ、前もね、何でこんなに俺が必死になってるか、分かんないの？羽奈の鈍感人間！って言われちゃった』
《…》
そこまで言われて分からないのか…
確かにかなりの鈍感人間だわ…
《祐基はね、ただ寂しいんだと思うよ〜？最近羽奈が相手にしてくれないから》
『でも祐基、結構モテるタイプだし、別にわたしじゃなくてもいいのに』
祐基がだんだん可哀想になってきた。
祐基…
ダメだこの子は…
でも何が腹立つって、祐基の気持ち本当は知ってるんじゃないかってことで、
わざと知らないフリをしてるんじゃないかってことで、
でもそれ以上に
羽奈は絶対脈ないんだから、わたしにしなよ
って気持ちを、祐基になかなか伝えられない自分が1番腹立つ。
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作者名：0号車さん | 作成日時：2017年4月5日 16時
