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ジョンインside
『私、パク・Aっていうの！』
『またね！ジョンイン！』
やっぱり懐かしい味が広がって、古い記憶がパチパチと泡のように浮かんでは消える。
脳裏が刺激されて、懐かしさで胸が締め付けられるような感覚。
押し潰されるような、妙な圧迫感だ。
｢う〜んうまい！いいんじゃないか？良くできてる｣
｢ははっ、ありがとう。｣
でも、と父さんが俺の頭の上に大きな手を置いて
｢店に出せる程じゃねぇな。｣と眉を下げて笑った。
うんうんと頷きながら、そのまま俺の頭を雑に撫でる。
｢ちょ、なに父さん…！｣
｢ははは！｣
満足そう笑ってにキッチンを出てった父さん。
父さんが仕事場に入ったのを確認して、自分の頬が濡れていることに初めて気付いた。
｢なんだよ、これ…｣
胸が苦しい。胃がムカムカする。
自分の目から流れるそれは全く止まってくれない。
こすってもこすっても、次から次へと流れてくる。
襲ってくる妙な虚無感。
まるで小さい子どものように涙が流れて止まらなかった。感情がぐちゃぐちゃで、自分でもコントロールできない。
俺の中で糸みたいに感情が絡まる。
この不思議で複雑な感情の正体を、きっと俺は知っている。
『だってジョンイン、ギョンス先輩にA取られて拗ねてたじゃん』
いつかのセフンの言葉が頭のなかで反芻する。
もともとAは誰のものでもない。そんなのは分かってる。
正直、Aに彼氏ができたとき素直に喜べなかった。
気付くのが遅すぎた？
…いや、気づかないフリしてたんだ。
出会った頃から隣にいるのが当たり前で、これからも当たり前のように一緒にいれると思ってた。
あ〜あ。こんな今さら……どうすんだよ、俺。
キッチンの窓から明るい光が差し込む。
涙でぼやける視界でそれは、とても美しく写った。
25日、聖なるクリスマス。
眠ってた俺の初恋は、青い炎のように音も立てずにゆらゆらと燃え上がった
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作者名：きゃっち | 作成日時：2016年2月28日 16時
