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目を瞑ったままでいると、頭に触れる手。





「……可愛い」





そう言いながら頭を撫でて、手が離れた。


恥ずかしすぎて、このまま起きれないよ。




そう思っていると、背中にかかったのは恐らく宮近くんのジャージの上着。


また頭を撫でてきた宮近くんは、どうやらそのまま教室を出て行ったみたい。


……助かった。


宮近くんに会いたくて、話したくて残ったはずなのに、私変だよね。




顔を上げて上着を見ると、やっぱり宮近くんのものだった。


宮近くん、ジャージ取りに帰ってくるかな?


なんて話したらいいんだろう、わからないよ。





「あれ、A?」





教室のドアが開く音と一緒に聞こえてきた声。





『え、海斗?』




声がした方を見ると、海斗がいた。


どうして?部活中のはずなのに……





「ピック、新しいの買ったのに机の中に入れちゃってたから取りに来た」





海斗には何も話していないのに、顔を見ただけで私が聞きたいことがわかったんだろうか。


“……お、あったあった”と言いながら、机の奥からピックを取り出した。





「Aはなんで残ってんの?」


『あ、いや別に……』


「何も無いなら海人と帰れば良かったじゃん。また喧嘩したの?」


『ううん、そうじゃないんだけどね』





濁すのが苦手な私を、海斗は見透かすように見つめてくる。





「てか、何そのジャージ。今日体育なかったじゃん」


『えっと、これは……』





上手く誤魔化せなくて黙り込むと、ため息をつかれる。





「……また、ちゃか?」


『え?』


「Aのにしては大きい感じするから」





肩からかけられたジャージの裾を見ると、確かに自分よりも大きいのがわかる。


隠さないと、そう思って肩から下ろしてジャージを畳んだ。





『違う違う、私のに決まってるじゃん。帰り寒くなるかなと思ってカバンに入れてたの』


「ふーん、なら良いけど」





良いとは思っていないような表情。





『私帰るから、海斗は部活頑張ってね』


「ありがとう。気をつけて帰れよ」


『うん』






帰るなんて言って荷物を持って教室を出てきたけど、宮近くんのジャージ、どうしよう。


とりあえず海斗に会わないようにトイレに逃げ込んだ。

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作者名:愛生 | 作成日時:2023年12月4日 1時

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