49 ページ49
.
目を瞑ったままでいると、頭に触れる手。
「……可愛い」
そう言いながら頭を撫でて、手が離れた。
恥ずかしすぎて、このまま起きれないよ。
そう思っていると、背中にかかったのは恐らく宮近くんのジャージの上着。
また頭を撫でてきた宮近くんは、どうやらそのまま教室を出て行ったみたい。
……助かった。
宮近くんに会いたくて、話したくて残ったはずなのに、私変だよね。
顔を上げて上着を見ると、やっぱり宮近くんのものだった。
宮近くん、ジャージ取りに帰ってくるかな?
なんて話したらいいんだろう、わからないよ。
「あれ、A?」
教室のドアが開く音と一緒に聞こえてきた声。
『え、海斗?』
声がした方を見ると、海斗がいた。
どうして?部活中のはずなのに……
「ピック、新しいの買ったのに机の中に入れちゃってたから取りに来た」
海斗には何も話していないのに、顔を見ただけで私が聞きたいことがわかったんだろうか。
“……お、あったあった”と言いながら、机の奥からピックを取り出した。
「Aはなんで残ってんの?」
『あ、いや別に……』
「何も無いなら海人と帰れば良かったじゃん。また喧嘩したの?」
『ううん、そうじゃないんだけどね』
濁すのが苦手な私を、海斗は見透かすように見つめてくる。
「てか、何そのジャージ。今日体育なかったじゃん」
『えっと、これは……』
上手く誤魔化せなくて黙り込むと、ため息をつかれる。
「……また、ちゃか?」
『え?』
「Aのにしては大きい感じするから」
肩からかけられたジャージの裾を見ると、確かに自分よりも大きいのがわかる。
隠さないと、そう思って肩から下ろしてジャージを畳んだ。
『違う違う、私のに決まってるじゃん。帰り寒くなるかなと思ってカバンに入れてたの』
「ふーん、なら良いけど」
良いとは思っていないような表情。
『私帰るから、海斗は部活頑張ってね』
「ありがとう。気をつけて帰れよ」
『うん』
帰るなんて言って荷物を持って教室を出てきたけど、宮近くんのジャージ、どうしよう。
とりあえず海斗に会わないようにトイレに逃げ込んだ。
215人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:愛生 | 作成日時:2023年12月4日 1時