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驚いた、驚きすぎて間違えて、ヒロではなく赤井に今すぐ来いと電話した程に。
本来なら救急車を呼ぶところだが…何故か、それは止めといた方がいいと直感で思ったのだ。
少女を起こそうと肩に手をかけるも、そのまま傾く身体を慌てて抱き寄せる。
同時にカタリと鳴るなにか。
____日本刀。
思わず息を呑んだ。
本物か?いや、まさかな。
着ている羽織といい、学ランのようなものといい、恐らくコスプレか何かだろう。
…だが、随分と着古している。
まるで、この格好で生活しているような…。
ふと香ってくる__血の匂い。
「っ、!!」
見れば、腹の部分には血がついている。
衣服には傷がついていないものの、繊維には滲んでいる。
なんなんだ、この子は、一体。
…まずは、治療をしなければ。
温もりがまだある少女を抱き上げ、玄関の鍵を開けて靴を脱ぎ捨てリビングへと行く。
「っ……」
年頃の少女には悪いが…これは、治療。
そう、これは治療だ。
邪な気持ちなんて一切ない!よし!!
羽織を脱がし、学ランのようなものを脱がしていき、バスタオルで腹以外を覆う。
腹部を見て息を呑んだ。
………傷が、ない。
傷がないのに、血がべったりとついている。その量からして、酷い傷だと思うのだが。
「零!!おま、いくらなんでも未成年はダメだろう!!」
「降谷くん、君にそんな性癖があったとは…」
「なワケあるか!!!赤井!!貴様は何故ここにいる!?」
「君が呼んだのにその言い草はないんじゃないか?」
「ぐっ……」
正論だ。
……まぁいい、とりあえず優先はこっちだ。
濡らしたタオルで血を拭き取っていけば、白磁の肌が見えてきた。
そして、無数の古い刀傷。
浅いものから……深そうなものまで。
まるで、戦場に身を置いているような…。
「零」
「っ!!」
「何をすればいい?」
「あ、あぁ……俺の寝室から」
服を持ってきてくれ。
そう言おうとして、口を閉じた。
どうにも、この少女に洋服が似合わない…というか想像できないのだ。
可笑しなことに。
「浴衣、浴衣を持ってきてくれ」
「は、?」
「いいから!!早く!!」
「わ、わかった!!」
「降谷くん…君にそんな」
「違う赤井黙ってろ」
この少女には、浴衣や着物…そっちの方がやけにしっくりくるのだ。
それほど、少女が纏う空気感が異質だったのだ。
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漂白剤 - 面白い・・・・・・主人公可愛い・・・・続きが楽しみ!!! (2020年9月20日 13時) (レス) id: 836661e0c9 (このIDを非表示/違反報告)
癒秘松(プロフ) - 面白いです頑張ってください! (2020年6月22日 14時) (レス) id: ac573f2cb6 (このIDを非表示/違反報告)
斑鳩(プロフ) - あれ?コメント出来るようになってる…!夢主さんと降谷達のジェネレーションギャップが良いですね!今後も頑張ってください! (2020年5月20日 13時) (レス) id: e4a4760cd6 (このIDを非表示/違反報告)
ぱすてるくれよん - すごく面白くて読むのがとても楽しいです!!私はコナンも鬼滅も好きです(赤井さんと無一郎が特に)更新頑張ってください! (2020年5月19日 22時) (レス) id: 79fdb8f695 (このIDを非表示/違反報告)
花璋(プロフ) - なんかもう本当に大日本帝国であった頃の文化や価値観を文章として巧みに表現なされていて、読んでいて自然と居住まいを正してしまうような、素晴らしい文章力にコメントが上手くまとまらない程感動しました!類を見ない異色の合わせに今後の展開がとても楽しみです! (2020年5月3日 21時) (レス) id: 16d4e71997 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水梨リンゴ | 作成日時:2020年4月28日 18時