【HELLSING】WEATHER ～II～ (ページ9)

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……だけどそうだ。姿を消すなんて芸当ができるこの吸血鬼であれば、気付かれることなく様子を窺うことだって容易いに決まっている。それは理解できるし、納得もできるけど……っ！
でもでも何で寄りにも寄ってこの男に……！他人の醜態を嘲笑うのが生き甲斐のようなこの男に見られていたなんて……！！
一生の不覚……！人生において最大最悪の汚点だ……！！本当に何であんな行動を起こしたんだ私のバカ……！！

己の失態を嘆きながら後悔と羞恥に打ち震えていると、案の定、これ以上ないくらいに上機嫌な声が降って来た。

「空想の産物を呼び出そうと奮闘するお前の姿と言ったら抱腹絶倒(ほうふくぜっとう)ものだった。
　実に滑稽！まさに愚鈍！下手なコメディ映画より楽しめる」
「う、煩いな！だっ、大体ね、姿を消して様子を窺うなんて卑怯だよ！」

込み上げる怒りと羞恥に顔を真っ赤にさせつつ苦し紛れに苦言を呈するも、「何とでも言え」と足蹴にされる始末。おまけに鼻で笑われた。畜生。
苛立ちは収まらないし言いたいことは山ほどあるのだが、そのどれもが八つ当たり染みたものでしかなく。それを奴にぶつけたところで軽くあしらわれるだけだと分かり切っている為に、レンとしても口を閉じるしかない訳で。
とは言え、大人しく黙っていられる筈もないので、代わりにうんと恨みを込めた視線をアーカードに向けてやる。

「まあしかし、こうも上手く事が運ぶとはな。その点に関しては私としても
　想定外ではあったが……それもこれも、お前が単純であるからこそか。
　何にせよ、お前の愚鈍さ加減には存分に楽しませてもらった」

「全く以て期待を裏切らん奴だな、お前は」と、心底人を見下した態度でもって嘲笑気味に言うアーカードに軽く殺意すら湧いて来る。

あんたの所為でこっちは主との関係崩壊の危機に陥りかけたんだぞ。もっと言えば、懲戒解雇処分の危機に立たされて路頭に迷うか否かの瀬戸際だったんだぞ。……正気の沙汰とは思えない行動に走ったのは自分なんだけども。そんでもって解雇なんてそんな話の流れでも全くなかったんだけども。
だけどそれは反骨心がそうさせたのだから仕方がない。好奇心に抗えなかったんだからやむを得ない。ついでにネガティブ精神がバーストして早合点しちゃった訳だから致し方ない。
何だかんだ理屈をこねて、こっそり胸の内で自分を正当化してみるレンだった。