【HELLSING】WEATHER ～II～ (ページ6)

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とは言っても、それ以前にアーカードを前にしただけであからさまにへっぴり腰になるレンに、そのような暴挙に出るほどの度胸があるはずもないんだが。

「そもそも色気どころか女性らしさすら皆無なお子様には到底無理な話だったな。
　言うだけ無駄だったようだ」

それにしても本当に腹立つな、こいつ……っ！！

たかが悲鳴ごときに一言も二言も余計な言葉が多いアーカードへの怒りに打ち震えながら、トレイを持つ手がついうっかり滑りそうになるのを必死に抑え込む。
そんなこちらの様子を見下ろす奴の殊更楽しげな表情が、腸が煮えくり返るほどに憎たらしい。

というか何？言うだけ無駄だった、だって？ああそうだろうさ……！
あんたがちょっかい仕掛けてくる度に、こっちはストレスフルな状態にさせられる訳なのだから、あんたがいる限りはそりゃあ優雅で気品と知性溢れる淑女なんて到底無理な話だろうよ……！到底な……！……自分で言ってて悲しいけどな！

自分が淑女になれないのはアーカードの所為などと、完全に責任転嫁とも取れなくもないような言い分を胸中でまくし立てるレン。しかしながら彼女の場合、それを抜きにしても端から望むべくもないことのような気もするが。
何をしてもエレガントさに欠ける点だとか、気品など微塵も感じられない点だとか、知性がからっきしな点だとか、そういった絶望的かつ無能極まりない天性の才能の持ち主だからという意味で。
まあ、それこそがレンがレンたる所以(ゆえん)であるのだけども。

「お子様で悪かったね……！っていうか、そんなことはどうだっていいんだよ！」

そう、そんな話はどうだっていい。こんな底辺な言い争いをしている場合じゃない。こっちは今朝の、アーカードから味わわされた屈辱を忘れた訳じゃないんだ。
この男が何用で現れたかは知らないが、次に会った時は絶対に物申してやると決めていた。……とは言っても、自分自身の精神面の安全を考慮すると、奴なんかとは会わないに越したことはないんだけど。というか会いたくもないんだけど。
だがしかし、ここで奴と顔を合わせたからには丁度いい。この際文句の１つや２つ、ばしっとぶつけてやらなきゃこちらの気が済まないと言うものだ。