㉕ ページ26
全力で謳歌中の人生に勝手にピリオドを打たせ、望んでもいない第2の人生を強制的にスタートさせようとするとか、ひとの人生を何だと思っているのだろうこの男は。
アーカードの身勝手な言動に強い怒りを覚えるが、それを実行されるのも時間の問題とも言えるかも知れない。
唯一の頼りの綱である強固な後ろ盾も効果なしの今、レンに残された術はないからだ。ビビリながらも暴言を喚き散らすくらいしか。
なので、とりあえず思い付く限りの暴言をぶつけて罵倒してみた。
「い、嫌だって言ってるんだからいい加減に離してよ!
このヘンタイ!セクハラ!鬼!悪魔!吸血鬼!」
……最後のは暴言ですらないが。
「実に嘆かわしい脳みそなことだ」
アーカードはそう言って、唇の端を吊り上げてシニカルに笑う。
またもや失礼なことをこの男、とイラッとするレンだったが、ぐっと接近する顔にそんな怒りも瞬時に飛んでった。
「先ほど言ったはずだが、もう忘れたのかね?そう嫌がられると却って燃えるものだ、と」
高揚感を滲ませた声で囁くように告げられ、再びガチンと固まるレン。それをアーカードは赤い瞳で見下ろし、身の毛もよだつほど危険極まりない笑みを浮かべてトドメの一言を放った。
「潔く諦めて、大人しく私に血を寄越せ」
「ひぎゃぁぁああああーーーーーッッ!!」
一気に振り切れるレンのパニックメーター。
後ろは壁。目の前には吸血モード全開のアーカード。壁ドンに身動き取れず、助けは期待できない。最大級のピンチに為す術なし。もはや絶体絶命である。
「まままま待って!待ってぇぇえーー!!」
渾身の叫びも虚しく接近する顔。抵抗の甲斐もなく迫る牙。
レンの脳裏に浮かぶ、“人間終了”の文字。
万事休すか―――そう思われた時、救世主は現れた。
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作者名:壱 | 作成日時:2021年3月22日 23時