【HELLSING】WEATHER ～II～ (ページ11)

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「いやはや、主に対するお前のその献身振りには頭が下がる」
「そ、そう思うんだったら、少しは見習ったらどうなのさ……！」

ビビリのレンと言えども、言われっ放しでは気が済まない。言われたら言い返す。倍返しだ！……とまでは行かないけれども、ちょっぴり皮肉を込めて言ってやる。
常に不遜な態度で当主を敬う気持ちが欠片も感じられないアーカードへの、レンなりのささやかな反論だった。

「見習う？見習うだと？」

明らかに嘲笑交じりの口調でそう言い、アーカードは鼻で笑う。そして人を見下した態度でもって傲然(ごうぜん)と言い放った。

「馬鹿を言え。主に褒められて喜ぶ犬はお前だけで充分だ、小娘」
「い……っ！？」

言うに事欠いてこの男……！！

失礼かつ不愉快極まりない発言に呆気に取られるレンに、アーカードは「そうだろう？」と口角を引き上げる。

「主に忠実で献身的。更には締まりのない顔を晒して尻尾まで振る始末。
　まさに犬ではないか。そう表現する以外に何がある？」
「あ、あのねぇ……っ！」

人の神経を逆撫でするようなことを平然と言ってのけるこの男は、まさに煽りのスペシャリストだと実感する。もはやイラッとくるどころの話ではない。
底意地の悪い笑みを浮かべて皮肉を多分に含んだ口調で揶揄するアーカードに、全身の血液が沸騰しかかった。

大体、人を犬呼ばわりとか失礼にも程がある。ああでももし自分が犬だったら、今すぐにこの男の顔面目掛けて飛びかかってやるのに……！そんでもって、憎たらしいほど形のいいあの鼻に思いっ切り噛み付いてやるのに……！！……いやまあ無理なんだけどさ。
例え勢い任せに飛びかかったところで、首根っこ掴まれて宙吊りにされてぶらんぶらんされている光景が容易に想像できる。

アーカードに対して反抗する勇気もなければ、この男を言い負かせられるだけの頭脳もなく。ただただ蓄積してゆくフラストレーションに、レンは肩をふるふると小刻みに震わせて悔しさを露わにする。
手元にハンカチがあったなら、漫画のように端を噛んで“キーッ”とやりそうな勢いだ。
そんな不満一色の表情で睨むレンに、アーカードは殊更(ことさら)楽しげに笑って言った。

「お前の無様な姿を拝みたいがために突発的に思い付いた考えではあったが……。
　貴重な睡眠時間を削ってまで実行した甲斐があった」
「いや、寝ててよ……！そこはむしろ寝ていてよ……！」

というか何だそのふざけた動機は。
そんなことのために削んなくていいよ。削る必要性まったくなかったよ。
今世紀最大のありがた迷惑だよ。ちっともありがたくないけど。迷惑しかないけど。