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エイプリルフールの決まりとして、午前中に限り嘘を吐くことが許されており、正午を過ぎた現時点で嘘を吐くことはできない。
これは地方限定のローカルルールではあるのだが、そのルールを破って嘘を吐こうものなら逆に騙した側が愚か者扱いされてしまうという、恐ろしくも恥ずかしいカウンターアタックを食らう羽目になるのである。

ということは、先ほどの彼女の発言は本当に幻聴とか聞き間違いだとかじゃなくて、ましてや嘘でもなくて、それどころか紛れもない彼女の本心で―――

「レン」

手元の懐中時計に視線を落としたまま、やや混乱状態の頭で1つ1つ噛み砕いていると不意に呼びかけられた。
考えを中断して顔を上げた先には、穏やかな眼差しでこちらを見詰めるインテグラが。その表情に、胸が一瞬どきんと強く脈を打つ。
そんな自分に内心で疑問符を浮かべて戸惑うレンに、インテグラは口元に小さく笑みを浮かべ、優しく諭すように言った。

「自信を持てとは言わん。だがな、そんな得体の知れんものに頼らずとも、
 お前の仕事に対する誠実さはしっかりと伝わっている。―――だから余計な心配はするな」

きりっとした涼しげな目元を柔らかく細め、優しげな口調で告げられる。その言葉に、レンは目を見開いた。
丸い眼鏡の奥の青い瞳を、レンは驚きに満ちた表情で見詰める。驚きと戸惑いを感じながらもレンの胸に広がってゆくのは、それらを上回るほどの安堵感と嬉しさだった。

レンの日々の努力を、インテグラは知ってくれていた。
レンの誠意は、彼女にちゃんと伝わっていた。

そのことを実感すると共に、これまでずっと自分の中にあった不安が払拭されてゆくのを、この時レンは確かに感じた。

「マスター……」

時折、彼女の言葉は魔法のようだと思うことがある。目には見えない、不思議な力を秘めているように感じる時がある。
彼女の落ち着いた声で奏でられる言葉は、レンにとって何よりも効果覿面で。
今回だってそう。彼女の唇から紡がれる言葉は、元気が出る魔法がかかっているかのように、レンの沈んだ心を一気に持ち上げてくれるのだから。

「まあ、常人には理解しがたい奇行に走るような、実にイカレた誠実さでもあるがな」

……落とすのもまた然り、だが。

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設定タグ:HELLSING,ヘルシング , 女主人公 , 百合   
作品ジャンル:アニメ
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(プロフ) - 死音心音2.0さん» お褒めに預かり誠に光栄。まさに感謝の極み(キリッ)いやホント冗談抜きにありがとうございます!アイス共感のみならず、こちらの気遣いまで……!マジもんの天使かよ……!?HELLSINGは今なお色褪せない名作だと思っていますので、今後も宜しくお願いします! (2022年2月11日 20時) (レス) id: 8ec81766f6 (このIDを非表示/違反報告)
死音心音2.0(プロフ) - HELLSING夢、しかも百合だと?オマケに文章まで最高ときたか……パーフェクトだ 壱。そしてお風呂で食べるアイス美味しいよねッ!続き楽しみにしてます、寒さにはお気をつけて! (2022年2月9日 2時) (レス) id: 2a5e77e557 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2021年3月22日 22時

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