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尽きることなく湧いて出るレンへの愚痴だけで、軽く1、2時間は潰せそうだ。とは言え、貴重な時間をそんなくだらないことに費やすのも無意味かつ無駄なので、一旦思考を中断させる。
気分を変えようと灰皿に置いた葉巻にちらりと目をやるも、何だか吸う気も失ってしまった。


未だ(くすぶ)ってはいるが、このまま放置していればそのうち消火するだろう。
まだ充分吸える長さではあるものの、一度(ひとたび)火を点けて中断した葉巻は時間の経過とともに香りも風味も劣化してしまうため、吸いさしに再び火を点けて吸い直す行為は好まない。
よって、この吸いかけの葉巻はゴミ箱行きだ。
1本無駄にした気分になるが、何だかもうそんなことすらどうでもよくなる程に疲れた。とりあえず疲れた。とにかく疲れた。

インテグラは気怠げな表情で、くすんだ白煙が細く立ち上る葉巻からティーカップへ視線を移した。
紅茶が半分ほど残っているカップからは、緩やかに白い湯気が上っている。それを見詰めるインテグラの頭の中で思い返されるのは、先ほどレンが口にした言葉だった。


―――私にとって唯一無二の心の支えであってやる気の源であって生き甲斐なんです!

差し迫った様子でそう言った、彼女の悲痛な表情が思い浮かぶ。

インテグラとしても自らレンを外す気は更々ないが、彼女の意思を汲み取りたいと思う気持ちは常にある。
彼女の負担になっているのであれば、無理強いはするべきではないだろう―――そう思ったが、レンの様子からその心配は不要だったようだ。それどころか、彼女にとって給仕という役目が、まさかそれ程までに大きなものだったとは思いも寄らず。

レンから滲み出る必死さと切羽詰まったような表情には驚いたし、意味不明と化した彼女に若干引きはしたが、どうやら自分で思っていたよりも気掛かりであったらしい。―――レンの本心を知った瞬間、強い安堵感を覚えるほどには。

(唯一無二の心の支えで、やる気の源で、生き甲斐……か)

ティーカップを映す青い双眸を僅かに眇め、インテグラは胸の内でレンの言葉を思い返す。
泣き喚くレンを宥めるのに疲弊したし、給仕ごときで大袈裟な、と呆れもしたが、その思いに反して気掛かりだったことが解消され、胸中がすっきりとしているのを自覚した。

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設定タグ:HELLSING,ヘルシング , 女主人公 , 百合   
作品ジャンル:アニメ
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(プロフ) - 死音心音2.0さん» お褒めに預かり誠に光栄。まさに感謝の極み(キリッ)いやホント冗談抜きにありがとうございます!アイス共感のみならず、こちらの気遣いまで……!マジもんの天使かよ……!?HELLSINGは今なお色褪せない名作だと思っていますので、今後も宜しくお願いします! (2022年2月11日 20時) (レス) id: 8ec81766f6 (このIDを非表示/違反報告)
死音心音2.0(プロフ) - HELLSING夢、しかも百合だと?オマケに文章まで最高ときたか……パーフェクトだ 壱。そしてお風呂で食べるアイス美味しいよねッ!続き楽しみにしてます、寒さにはお気をつけて! (2022年2月9日 2時) (レス) id: 2a5e77e557 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2021年3月22日 22時

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