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何がどうなってそんな話になったか。
その理由を述べるとすれば、先ほどインテグラが気遣って口にした「重荷だったか?」という発言をレンの頭が誤って解釈してしまい、持ち前のネガティブ思考でもって悪い方向へ早合点してしまったがためにそうなったのである。
言った本人としては単に気遣って口にしただけのことであったのだが、それが思わぬ事態を引き起こすきっかけになってしまったなどとは知る由もないインテグラと、ヒートアップしてしまったネガティブ感情により、見事にズレた方向へフルスロットルで一直線に突っ込んでいくレン。
「せめて減給にして下さいぃぃーー!!無給でも構いませんからぁぁーー!!
解雇なんてされたら私……っ、ショックで死んじゃうぅぅーー!!」
「分かった分かった!外さないし取らない!減給も解雇もなしだ!
だからとにかく落ち着け!」
何だか見当違いな上にとっても飛躍しまくったことを言い縋るように喚くレンを、インテグラは全力で宥めすかす。半ば投げやりのように言い放ったその言葉によって、興奮状態だったレンはようやく鎮静の兆しを見せた。
「あううぅぅーー……」と間抜けな唸り声を漏らして、ぐすぐすと小さく鼻を鳴らしながら涙を拭う。
(まったく、この娘は……)
インテグラは心底疲れきった顔で溜息を吐き、どさりと椅子にかけ直した。背凭れに寄りかかり、気怠げに脚を組む。そうして呆れを滲ませた瞳でレンを見やり、疲れ果てたような口調で言った。
「何たっていきなりそんな突拍子もない話になるんだ……」
「だ、だって……あまりにも私が不甲斐なさ過ぎて、
てっきりお払い箱にされちゃうんじゃないかと思って……」
「そんな話をしてたか?飛躍させ過ぎだろう。早とちりもいいところだ、この馬鹿娘」
「う゛ぅ゛……すみません……」
ぐすっと小さく鼻を鳴らし、レンは小さく呟くように言う。泣いているために実に情けない声だ。何だか聞いているこっちまで気が抜けてしまう。
というか、何でこいつの思考はこうも短絡的なうえに予想外な方向へ働くのだろう。
不甲斐ないという点については特にコメントもしないし否定もしないが、一体何をどうしてどこをどう経由したら解雇されるなどというそんな考えに至るのか。半日だけでどれだけ人を呆れさせる気なんだこの娘は。
椅子の背に凭れたまま呆れの眼差しをレンへと向け、胸中で悪態を吐きまくるインテグラ。
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壱(プロフ) - 死音心音2.0さん» お褒めに預かり誠に光栄。まさに感謝の極み(キリッ)いやホント冗談抜きにありがとうございます!アイス共感のみならず、こちらの気遣いまで……!マジもんの天使かよ……!?HELLSINGは今なお色褪せない名作だと思っていますので、今後も宜しくお願いします! (2022年2月11日 20時) (レス) id: 8ec81766f6 (このIDを非表示/違反報告)
死音心音2.0(プロフ) - HELLSING夢、しかも百合だと?オマケに文章まで最高ときたか……パーフェクトだ 壱。そしてお風呂で食べるアイス美味しいよねッ!続き楽しみにしてます、寒さにはお気をつけて! (2022年2月9日 2時) (レス) id: 2a5e77e557 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:壱 | 作成日時:2021年3月22日 22時