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「アーカードの言うことなので、絶対にデタラメだとは思ったんですよ。
 真に受けるべきじゃないって思ったんですけど……ただ、その……」

途中で躊躇うように言い淀んだレンは、頬を紅潮させたまま所在なさげに視線を彷徨わせる。そんなレンにインテグラは小首を傾げながらも、彼女を真っ直ぐに見詰めて続く言葉を待った。
レンは足元に広がる黒と白のチェス盤のような床へ視線を落とし、呟くように言葉を口にする。

「信じたって言うより、本当だったらいいなっていう期待を抱いたのは事実です……
 だって……」

レンはそこで一呼吸置き、躊躇うような様子で唇を引き結んだ。そして視線を下方に逸らしたまま、おずおずと口を開く。

「そ、それで今よりも更に美味しくなったら、
 マスターにもっと喜んでもらえるかな、って……そう思いまして……」

もごもごと口の中で呟くように告げた言葉は、語尾に近付くにつれて徐々に尻すぼみに小さくなっていく。
―――この時、レンの言葉に耳を傾けていたインテグラの青い瞳が小さく見開かれたが、視線を下方に向けていた彼女はそのことに気付くことはなく。
恥ずかしさと居た堪れなさがじわじわと込み上げてくるのを感じつつ、レンは若干顔を俯かせたまま、間を置かず付け足すように続けた。

「そ、それと後、アーカードにバカにされた悔しさで、頭に血が上ったと言いますか、
 師匠に教えてもらえなかった悲しさ故に、半ば自棄を起こしたと言いますか……」

―――現に、未だ出会えていないのだろう?

今考えれば、その言葉こそがレンの心に火を点けたきっかけのように思う。


アーカードなんかの話を本気にするべきではないと思いつつも、彼のその発言がどうにも引っかかっていた。“未だに紅茶の精に出会えていないのは、単にお前の誠意が足りないからだ”と、そう言われているような気がして。

そしてレン的に何よりショックだったのは、アーカードですら知っている“紅茶の精”の説を、信頼する師であるウォルターから今の今まで知らされずにいたということだ。
紅茶がより美味しくなる方法―――すなわち、インテグラに喜んでもらうための方法を教えてもらえなかった。そのことは、レンに多大な衝撃と動揺を与えた。

己の主であるインテグラのためならば、あらゆる努力を惜しまないレンである。どんなに些細なことでも記憶に刻んで留めて置きたいという意思は誰よりも強い。そのことは、彼も知ってくれている筈なのに、と。

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設定タグ:HELLSING,ヘルシング , 女主人公 , 百合   
作品ジャンル:アニメ
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(プロフ) - 死音心音2.0さん» お褒めに預かり誠に光栄。まさに感謝の極み(キリッ)いやホント冗談抜きにありがとうございます!アイス共感のみならず、こちらの気遣いまで……!マジもんの天使かよ……!?HELLSINGは今なお色褪せない名作だと思っていますので、今後も宜しくお願いします! (2022年2月11日 20時) (レス) id: 8ec81766f6 (このIDを非表示/違反報告)
死音心音2.0(プロフ) - HELLSING夢、しかも百合だと?オマケに文章まで最高ときたか……パーフェクトだ 壱。そしてお風呂で食べるアイス美味しいよねッ!続き楽しみにしてます、寒さにはお気をつけて! (2022年2月9日 2時) (レス) id: 2a5e77e557 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2021年3月22日 22時

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